SMMA SENDAI MIYAGI MUSEUM ALLIANCE 仙台・宮城ミュージアムアライアンス

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見験楽学ミュージアムバスツアー2013☆コース2「石巻・まちの復興とミュージアム」開催終了

2013年4月10日(水)、晴れ。仙台市在住の24名の参加者が仙台駅に集まりました。
バスは9時に仙台駅を出発。一路、石巻へと向かいます。1時間が経つ頃には、車窓から津波による被害を受けた建物や田畑がみえてきました。車内では少しずつ緊張が高まってきます。

SMMA参加館のひとつ、せんだいメディアテーク前副館長の佐藤泰さんが、ツアーの内容や被災前の石巻の様子について語るうちに、バスは日和大橋(ひよりおおはし)、万石浦(まんごくうら)を通って宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)に到着。現地では、サン・ファン館の中澤希望さんが出迎えてくれました。海に面したミュージアムは、津波によりドック棟が破壊され展示物も流出するなど大きな被害を受け、現在も休館中です。併設のサン・ファンパークにて被災・復旧状況についてお話を聞きました。慶長使節出帆400年を迎える今秋のミュージアム再開を目指しており、イベントを開催しながら機運を盛り上げていきたいとのことです。春の花々に囲まれ、潮風に吹かれながら、津波を耐え抜いた復元船サン・ファン・バウティスタを眺めました。

写真1 サン・ファンパークでの説明

再びバスに乗り、昼食会場である石巻まちなか復興マルシェへ向かいます。
今回は、石巻の美味しいものが集まったマルシェ内で「あふれるめかぶ海鮮丼」をいただきました。お腹が満たされて一息ついたところで、店内をぶらり。旧北上川沿いのマルシェからは、川の中瀬にある石ノ森萬画館が見えます。今度は徒歩で内海橋(うつみばし)を渡り、萬画館へ向かいました。

写真2 あふれるめかぶ海鮮丼

到着後、研修室にてお二方の講話を聴講しました。
初めは萬画館の西條允敏さんより、萬画館の被災状況と今日までの活動を中心にお話を聞きました。萬画館は石巻市のマンガを活かしたまちづくりの拠点施設としてつくられたこと、被災後は「子どもたちの笑顔を取り戻すことで大人も笑顔にできる」との考えから、子ども向けの企画に力を入れていることなど。地域とミュージアムの未来像を描きながら日々活動されていることがわかりました。また、その裏にスタッフを勇気づける全国からの応援とご支援があったことと、それに対する感謝の気持ちも伝えてくださいました。

写真3 石ノ森萬画館研修室での講話

続いて、石巻市教育委員会の佐々木淳さんより、石巻文化センターの震災被害と文化財レスキューについてお話を聞きました。同センターには、布施辰治関係資料、毛利コレクション、彫刻家・高橋英吉の作品など石巻ゆかりの資料が数多く収蔵、展示されてきました。一帯は津波により壊滅的な被害を受けた場所で、同センターにも海水や土砂、近くの工場より流出したパルプが流れ込み、多くの資料が被災しました。震災直後、ライフラインが寸断され、がれきが散乱する中、関係機関のネットワークにより全国から専門家が駆けつけ資料の救出にあたったとのことです。すでに石巻文化センターの建物の取壊しは決定しており、今は資料を宮城県美術館や市内各施設などに分散させて保管しながら、新たな複合施設の準備を進めているそうです。

講話の後、2013年3月23日にリニューアルされたばかりの萬画館を見学しました。館内では、新たなヒーローの展示を前に、親子連れや若い男性グループなど楽しげに過ごしています。西條さんの講話にあったスタッフやボランティアによるがれきの撤去から再開までの奮闘を思うと、この光景は一層感慨深いものです。その後、ミュージアムショップに立ち寄り、次は石巻市街まち歩きに出かけます。

写真4 石ノ森萬画館からまち歩き出発

萬画館の外では、まち歩きのガイドを務めていただくISHINOMAKI2.0の松村豪太さんが出迎えてくださいました。ご挨拶のあと、さっそく石巻の商店街に向かって歩き始めます。松村さんから、港町として栄えた石巻のまちの成り立ちとともに、震災前からまちが抱えていた課題、震災が起きてから現在までの状況について解説していただきます。視界に入るのは、家屋が撤去された空き地、解体を待つ店舗、再開した店舗、震災後にできたギャラリーや工房、ボランティアの活動拠点。松村さんの真剣かつ丁寧な語り口から石巻への想いが伝わり、立ち止まってはお話に聞き入ります。震災後に全国から多様な技能をもった若者が石巻に入り、地元の方々とともに新しいまちをつくろうと模索している、そんな今の石巻を肌で感じました。これから姿を変えるであろう今の石巻のまち並みを目に焼き付けつつ、バスに乗り込みました。

写真5 まち歩きの様子

帰りのバスでは、参加者は体を休めながら静かに旅の余韻に浸っている様子。
車窓に見慣れた仙台のまち並みが映り、車内の緊張が解けた頃、予定通り17時に仙台駅に到着しました。

旅を終えて参加者のアンケートを開くと、先々での解説が好評で、現地の状況に理解を深められた有意義なツアーであったこと、それから被災地支援の想いや復興を祈る言葉が多く綴られていました。

まちには私たちの大切なものがたくさんあります。歴史・文化・芸術・自然・…。
「身近に当たり前にあって、それが当然のように思えるけれど、実はそれらは自分たちの手で守り伝えないと、簡単に失われてしまうものでもあるのです。」という松村さんのメッセージが今も胸に響きます。文化財を守ったり、まちの人を元気づけたり、震災を経て改めてミュージアムの役割をみつめる旅となりました。

仙台・宮城ミュージアムアライアンス事務局 石川歩

■■■見験楽学ミュージアムバスツアー「石巻・まちの復興とミュージアム」■■■
開催日:2013年4月10日(水)
見学地:宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)※休館中のためサン・ファンパークのみ、石ノ森萬画館、石巻市街地
参加者:24名

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