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2018/07/16
東北大学学術資源研究公開センター3施設合同企画展示「東北大学 お宝見参 in 附属図書館本館」レポート
今回は、東北大学付属図書館で開催中の東北大学学術資源研究公開センター3施設合同企画展示「東北大学 お宝見参 in 附属図書館本館」(2018年7月2日(月)〜20日(金))の様子をご紹介します。
東北大学総合学術博物館、東北大学史料館、東北大学植物園の3施設からなる東北大学学術資源研究公開センター。
東北大学の長い歴史の中で研究者たちが収集してきた資料や標本を、広く公開し活用していくことを目的に2006年に設立されました。
今回の展示は、分野もキャンパスも異なる3施設のお宝をいっぺんに堪能することができる贅沢な企画です。
まずは、東北大学総合学術博物館の展示です。
東北大学総合学術博物館は、理学部がある青葉山北キャンパスにあります。東北大学の100年を越える歴史の中で蓄積された古生物標本や岩石・鉱物標本、人類学・考古学資料、金属学・金属工学資料などさまざまな学術的資料標本が保存・公開されています。また、学内外の研究者とともに標本を用いた共同研究や、最新の研究成果を地域社会に伝える活動の実施など、東北大学のシンボルとも言える博物館です。今回の展示でも、様々な分野の多彩な資料を見ることができました。
▲ハリモグラなどの骨格標本(左)がお出迎え。展示ケースを見上げるとコウモリの骨格標本が!
▲世界最古の魚竜のひとつであるウタツギョリュウの模式標本(左)やアンモナイトの化石(右)もありました。東北大学総合学術博物館では数万点に及ぶ化石標本を保管しているとのこと。博物館に行くと大きなステゴザウルスの全身骨格模型も見られるそうです。
▲石包丁や江戸時代の鉄銭などの人類学・考古学資料(左)や、東北大学で発明されたニッケルを含まない軟質磁性材料センダストなどの金属学・金属工学資料(右)もありました。
東北大学総合学術博物館の展示は、まず専門分野の幅広さ、資料の多さに驚かされます。キャッチコピーは「大学の玉手箱」。東北大学の研究者たちが情熱をそそいで集めた標本や、発明品などのお宝が博物館にたくさん詰め込まれていることが伝わってきます。東北大学の長い歴史の中で研究に使われてきた大切な資料、そして今もこれからも研究に役立てられていく資料なのだと思うと感慨もひとしおです。東北大総合学術博物館に行けばまだまだたくさんのお宝と出会うことができますので、ぜひご覧下さい。
つづいて、東北大学史料館の展示です。
片平キャンパスにある東北大学史料館は、主に東北大学に関する歴史公文書などの資料を保存、公開するほか、中国近代を代表する文豪・思想家である魯迅が留学した際の資料を展示しています。また、建物自体も旧東北帝国大学附属図書館の閲覧室として建てられたロマネスク様式の建物で、2017年に登録有形文化財に登録された趣深い建造物です。
公文書が中心とのことですが、今回の展示を見ると、公文書の他にも東北大学にまつわる様々な資料を扱っていることが分かります。
▲「女性の東北帝大受験に関する文部省から大学への照会(複製)」。東北帝国大学に数名の女性が出願していると聞いた文部省の責任者が東北帝国大学の総長に真意を問いただすために送った書類です。日本で初めての「女子学生」が誕生した東北大学ならではの史料ですね。キャプションの隣には「公文書は基本です」という何やら意味深なコメントが…。
▲理学部気象観測室に飾られていたミミズクのステンドグラス。建物は昭和40年代に取り壊されましたが、「一部でも残します」というコメントにスタッフの情熱を感じます。
▲「鬼仏教官表(複製)」。教養部の各教官について、成績評価や授業の様子などを記したもので、「鬼」「並」「仏」の3段階で評価されています。「こんなものも集めます」というコメント通り! 作成した学生さんは資料として保管・展示されるなんて思いもよらなかったのではないでしょうか。
▲東北大学登録有形文化財の紹介コーナー。東北大学片平キャンパスにある「旧 仙台医学専門学校博物・理化学教室(東北大学本部棟3)」、「旧 東北帝国大学理学部化学教室棟(東北大学本部棟1)」、「旧 仙台医学専門学校六号教室(東北大学魯迅の階段教室)」、「旧 東北帝国大学附属図書館閲覧室(東北大学史料館)」、「旧 第二高等学校書庫(東北大学文化財収蔵庫)」の5つの歴史的建造物は、2017年10月に国の登録有形文化財に登録され、現在公開に向けて取り組みが行われています。
SMMAでも昨年の10月に東北大学史料館 准教授の加藤諭先生を案内人にお迎えして、片平キャンパス内の歴史的建造物や記念碑を巡る「SMMA見験楽学ツアー 片平キャンパス歴史散歩」を実施しました。(※その時の様子はこちらをご覧下さい。)
東北大学史料館の展示は、東北大学の足跡をたどるだけでなく、学生さんたちの息づかいが聞こえてきそうなところも魅力的です。東北大学出身の方はもちろん他大学の方も、それぞれの大学時代のことを思い出しながら見ることができる資料は必見です。他にも「宝が語る大学のルーツ」というキャッチコピー通りの資料と、スタッフの秀逸なコメントが展示されておりますので、ぜひご自身の目でお確かめ下さい。
最後に、東北大学植物園の展示をご紹介。
東北大学植物園は、川内南キャンパスの本園と青森県八甲田山系の八甲田山分園があります。本園は、敷地の約2/3を占める国指定天然記念物「青葉山」を保存公開しており、モミ、アカマツなどの700種以上の植物や、フクロウやニホンカモシカなどの多様な生物が生息しています。他にも、ロックガーデンで国内から収集した野生植物を植栽展示したり、青葉山の自然や植物学に関する屋内展示も行っています。
今回の展示では、仙台城二の丸スギ並木から採集した年輪や、様々な植物標本を見ることができました。
▲仙台城二の丸スギ並木から採取した年輪コア標本。本園本館の展示ホールには二の丸スギ並木の円盤もあるそうです。
▲園内で採集された冬虫夏草コレクション。植物園に冬虫夏草が出現するピークは8月とのこと。見つけてみたい!
東北大学植物園のキャッチコピーは「政宗の杜」ということで、植物はもちろんのこと、仙台城の裏山にあたる「御裏林」という立地ならではの歴史的な資料も魅力的です。園内には仙台城の防備を固めるために自然の地形を利用して作られた堀切跡や、茶室の跡地もあり、豊かな自然と合わせて楽しむことができます。運が良ければムササビやタヌキ、キツネなど可愛い野生動物にも出会えるかも! 企画展会場の東北大学附属図書館本館からは歩いてすぐの距離。企画展をご覧になった後に、ぜひ足をのばしてみてください。
今回の企画展は、図書館に入ってすぐの限られたスペースで開催されています。だからこそ3施設を代表するお宝が所狭しと並べられた見所しかない展示となっています。もちろん企画展だけでも十分すぎるほど楽しめますが、正面にある企画展のポスターには「3施設を巡ると大学の歴史や仙台の自然にとどまらず、地球の秘密までわかってしまうかも!?」という言葉が! これは3施設すべて巡ってみるしかないですね。地球の秘密知りたいです!
企画展は7月2日(月)〜20日(金)まで開催中です。期間が短いので興味のある方はお早めにご見学下さい! 入場無料です。
(事務局・帖地)
【お問い合わせ】
東北大学総合学術博物館
TEL: 022-795-6767