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企画展「東北・北海道を走ったブルートレイン」レポート


最近こんなチョコレートを入手しました、SMMA事務局吉田です。
こちら鉄道博物館にて販売中の「ヘッドマークチョコレート」。ブルートレインのヘッドマークを取り入れたデザインだそうですが、そもそもブルートレインとはどんな乗り物だったのでしょう。

というわけで今回は東北福祉大学・鉄道交流ステーションより、2016年12月6日(火)〜2017年3月4日(土)開催の企画展「東北・北海道を走ったブルートレイン」の様子をご紹介します。

 

 
今回の企画展では東北・北海道を機関車に牽かれて走っていた固定編成客車の寝台特急を取り上げ、
その変遷や魅力を様々な資料とともに紹介しています。


「ブルートレイン」という言葉が想起させる青い車体のイメージは、1958年に走った日本初の寝台特急「あさかぜ」に始まります。
まだ東海道新幹線も開通していない時代、長距離の移動には長い時間を要することから、夜間に移動できる夜行列車は非常に需要があったそうです。東京〜博多間に誕生した特急「あさかぜ」は、20系客車という寝台車を主体にした初めての固定編成の客車でした。〈走るホテル〉とも呼ばれた客車は青いボディー塗色が特長だったそうで、これが「ブルートレイン」という寝台列車の代名詞につながります。つまり「ブルートレイン」とは宿泊ができる列車のことだったわけですね。
1964年に東北で初めて走った寝台列車「はくつる」は、「あさかぜ」と同じ20系客車が用いられ、上野〜青森間を11時間40分(18:30〜6:10)で移動することができるようになったそうです。

 
▲「はくつる」仕様の20系客車の模型。青い車両を横から覗いてみると、左の食堂車のなかには赤いテーブルが並んでいます。

ちなみに東北本線で「はくつる」の運行が開始された時にはすでに東海道新幹線が開通していましたが、東北における夜行列車の需要はまだまだ大きかったそうです。加えて、列車に宿泊したまま遠くまで行く、という特長はブルートレイン独自の魅力として鉄道ファンや旅行家を魅了し続けました。時代の変化や車両の老朽化に伴い定期運行としては姿を消してしまいましたが、ブルートレインはいまでも多くの人に愛されています。


▲青函トンネルの開通に伴い、昭和63年に運行が始まった「北斗星」の車体(北海道型客車)を飾るエンブレムは、オリエント急行のエンブレムを思い起こさせる美麗なデザイン。ブルートレインへの憧れや旅のロマンを形にしたかのようです。

 

 
さて東北・北海道のブルートレインの特徴は、出発から到着までの長い移動距離を、複数の機関車がリレーのように客車を牽き繋ぎながら走るところにあります。おりしもブルートレインが活躍した時代は鉄道が電化を進めていた時代。客車を牽引する機関車は蒸気から電気、あるいはディーゼルへと時代や路線によって変化していきます。
たとえば1964年頃の「はくつる」は、上野〜黒磯間は直流電気機関車、黒磯〜仙台間は交流電気機関車、仙台〜青森間は電化していなかったので蒸気機関車が、それぞれ客車を牽引していました。さらにはこのあとの電化路線の延伸、重い車両も走れる頑丈な路盤の整備などを経て、ますます発展を遂げた新しい機関車が走るようになるのです。企画展では、「はくつる」を牽く機関車の種類が時代ごとに刻々と移り変わっていく様子を、多数の資料や写真で追いかけることができました。


東北本線経由の「はくつる」に限らず、常磐線経由の「ゆうづる」、東北本線や奥羽本線などを経由で上野〜秋田・青森間を走っていた「あけぼの」など、ほかのブルートレインにもこうした牽引機関車の変遷を見ることができます。長い旅路を多様な機関車が繋いでいく東北のブルートレインの在り方は、東北の鉄道史の発展をそのまま映し出しているのです。

 

 
 
また展示室には、主要な寝台特急を牽いた機関車の先頭に装着されていたヘッドマークが各種展示されています。直径などの規格は統一されていますが、よく見ると形態はそれぞれ微妙に異なるのも魅力のひとつ。蒸気機関車に付けられていた「ゆうづる」(右上)は鉄製の箱状で、金属の鋲(リベット)の跡も迫力です。学芸員の鈴木さんによると重量もあり、大人の男性二人がかりで展示ケースに入れたそうです。また本州型の「北斗星」は比較的軽いそうで、ラストラン用には金縁が付いています。北海道路線でディーゼル機関車に取り付けられていた「北斗星」(左下)のヘッドマークは背面に取り付け用の金具、表面にカバーが付けられているなど、構造の違いを色々見比べるのも楽しいものです。

 

 
 
そして今回の企画展の大きなみどころは、ブルートレインを愛する鉄道ファンのコレクションが所狭しと展示されていること。鈴木さんの呼びかけに応えた鉄道ファンから寄せられたコレクションの数々は、とても展示室に収まらない物量だったそうです。
そのなかから鈴木さんが悩みに悩んで選出した展示資料は、ブルートレイン愛好家コレクションの名品ともいえるものばかり。様々な年代に撮影されたブルートレインの写真は、ほんのわずかな時期にしか見られなかった牽引機関車の姿を収めたものから、寝台列車が停車している真夜中の仙台駅で撮影されたもの、ブルートレインならではの「推進回送」の様子をとらえたものまで、愛好家が切り取ったブルートレインの面白さが詰まっています。またラストラン限定の車両番号が記された乗務員用の携帯時刻表や、実際にブルートレインに乗ったときの乗車券など、当時の旅の雰囲気を伝える資料も多数展示されています。


▲こちらは乗客用のアメニティセット! ポーチに入っているトレインマークが良いですね。

 


というわけで、今回の企画展は東北・北海道を走っていたブルートレインの歴史はもちろんのこと、ブルートレインの在り方に映し出された東北鉄道史の変遷をたどり、その魅力をたっぷり感じられる内容になっています。在りし日のブルートレインがぐっと身近に思えるようになるかもしれません。

 

鉄道交流ステーションは、JR東北福祉大前駅を降りてすぐ目の前。企画展「東北・北海道のブルートレイン」は3月4日(土)まで開催しています。

 

 

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