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SMMAクロスイベント「宮城のやきものII」関連企画 見験楽学ミュージアムバスツアー〝みやぎのやきものがたり〟レポート

2010年11月11日(木)・11月18日(木)開催

やきものに触れ、やきものを学ぶ大人のための課外授業、ミュージアムバスツアーが11月11日と18日の2日間、開催されました。この企画は、SMMAのクロス展示「宮城のやきものII」の参加館5館のうち4館を一日でまわる、お得なプログラム。ツアーガイドとして東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館の濱田淑子参与が同行し、バス車内で各館の特徴を解説、さらに訪問館では学芸員が細かな説明をしてくれるなど、宮城にまつわるやきものについてたっぷり学んだ1日となりました。11日は38名、18日は21名の方が参加。両日とも天候に恵まれ、赤や黄色に染まった紅葉もちょうど見ごろ。小旅行気分の一行を乗せて、バスは午前9時に仙台駅を出発しました。

 1館目は『芹沢長介記念 東北陶磁文化館』。ここでは、ただ「見る」だけではない、やきものの楽しみ方を知ることができました。たとえば、その触感。本田泰貴学芸員が土器、せっ器、陶器、磁器の4種類の破片を参加者たちに手渡し、固さ、重さ、質感の違いなどを解説。それぞれの特徴を肌で感じました。また、製作背景を想像する楽しみ方も学びました。本田学芸員が、江戸後期に使われていた重ね焼き用の道具を手に、当時のアクロバティックな焼き方を解説。それを受け、参加者たちは重ね焼きの跡が残る展示品にも興味津々に。「この皿は跡がないから、一番上に重ねられたのね」など、窯の中の状態を想像しながら展示ケースを覗き込んでいました。

ほかに、逸話と合わせた楽しみ方も。本田学芸員からは、そのやきものにまつわるさまざまな話題が繰り出されます。「ご飯を食べる器を『茶碗』というのはなぜでしょう?」「土瓶をすべて右向きで展示している理由はわかりますか?」「お狐様に油揚げをお供えするのはどうしてでしょう?」などの質問に、答える参加者たちも夢中。答えがわかるたびに「あぁ~!」「なるほど!」と小さな驚きの声があがり、あらためて展示品を見て頷いていました。

やきものそのものについてはもちろん、さまざまな見方も学べた1館目。少し目が肥えたところで、バスは次の切込焼記念館へと向かいます。

 2館目は『加美町ふるさと陶芸館 切込焼記念館』。ここでは、切込焼の繁栄と衰退に想いを巡らせた人も多かったのではないでしょうか。

展示室に入る前に、まずは畠山靜子学芸員による切込焼の紹介から。「切込焼は、謎が多いと言われています。始まりがいつなのか、明確な終りがいつごろなのか、どれほどの量が焼かれていたのか、つかみどころがないやきものです」と、いまだヴェールに包まれた実態を語ります。そのうえで、切込焼の特徴であるらっきょう形や濁りのある色が、見ていて疲れず飽きない美しさがあると評価され始めていることも教えてくれました。

館内にはこの地で発掘された切込焼の破片や、当時の窯場のジオラマ、かつてここに居た切込焼の棟梁の資料なども展示してあり、その繁栄を物語ります。それを見ながら、なぜこれだけの美しいやきものたちが消えてしまったか、疑問を口にする方も多く見られました。

そんな参加者たちを特に釘づけにしたのが、『染付竹林七賢文らっきょう形徳利』。このとき開催されていた企画展「ほほえみ絵巻―切込焼 人物画の技と魅力―」のメイン作品です。絵付けの技術の素晴らしさに、参加者たちはおもわずため息。こんな素晴らしい作品がこの地に生まれていたのかと、時間を忘れて見入っていました。

 切込焼を鑑賞し、温泉保養施設『ゆーらんど』にて「いなか弁当」をいただいたあとは、1時間半ほどバスに揺られて3館目の『東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館』へ。こちらの1階には銈介氏の長男である芹沢長介氏が集めた東北地方のやきものが展示されています。これらを解説してくださったのは、本田秋子学芸員。さっそく、中庭に置かれた大きな堤焼の水甕の紹介から。「長介先生は真っ白い釉薬が三日月形にかけられたものを非常に好んでいたんです。

この中庭は、当初は石灯篭を置く予定だったのですが、長介先生がそれを好まずに(笑)この水甕を置こう!と」と、長介氏のセンスが光る中庭を紹介。ほか、長介氏が特に好きだったという明神堂や、蝋燭立、小さくてかわいらしい油壷など、民芸ならではの用の美を堪能。なかでも参加者が見入っていたのは、切込焼三彩の展示ケース。トルコブルー、茄子紺、白の3色で掛け分けされたやきものです。「切込焼三彩はときどきおもしろい模様に見えるものがあって、このお皿は中央にひらがなの『い』と書いてあるように見えたり、こちらの器は掌のような模様ができていたり。遊び心のある染め分けを見つけるのも楽しいですよ」との本田学芸員の説明をうけ、参加者は展示ケースの切込焼三彩をさまざまな角度から覗き込んでいました。

 ラストは『仙台市博物館』。ここでは三浦乾也という江戸の陶工の作品を鑑賞。まずは、高橋あけみ学芸員から、三浦乾也の紹介が。「三浦乾也は、もとは江戸の陶工でありながら幕府の命で造船学を学んでおり、仙台藩が軍艦を作る際に江戸から招いた人物。そのときに、堤焼の陶工・庄司乾馬を弟子にするなど、堤焼にも大きな影響を与えました」

との話を聞き、江戸仕込みのやきものに興味がわきます。そこには、手の込んだ繊細な作品が並んでいました。虫眼鏡で見るほど小さい『乾也玉簪(けんやだまかんざし)』には「こんなに細かいの!」と驚く声も。蓮の花をモチーフにした『蓮形柄香炉』では「つぼみが開く音が聞こえそう」などと、その細かな技術に感嘆の声。高橋学芸員のお気に入りでもある愛らしい『都鳥文言問団子皿』は、向島にある言問団子のお店でも1枚しか残っていないものが、こちらでは5枚揃いで展示されているなど、三浦乾也の貴重なコレクションがずらり。民芸とはまた違う、美術工芸品の魅力を味わい、仙台市博物館をあとにしました。

 夕方の4時30分。すべての日程を終えて、バスは仙台駅へ。皆さんのお疲れ具合が気になっていましたが、最後にいただいたアンケートでは「満足した」に丸がたくさん付いており、SMMAも一安心でした。ただ、1日で4館をまわるスケジュールは、さすがに欲張りすぎたかもしれません。各館の滞在時間にもう少し余裕があれば……!昼食をゆっくりとりたかった……!と、今後の課題も見えました。


それと同時に、SMMAにとってうれしい気付きもたくさん。参加者のみなさんがとても熱心で、この機会を活用しようと積極的に学芸員と接する姿勢に、このミュージアムバスツアーの意味を改めて感じさせられました。

宮城のやきものの歴史を肌で感じた「みやぎのやきものがたり」。次はどんな体験をできるでしょう? 今後のSMMAの活動もどうぞお楽しみに!

(SMMA編集室)

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