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活版印刷ワークショップ 2010年8月28日、29日 報告

 夏の終わりというのに猛暑が続く8月28日、29日、活版印刷ワークショップとレクチャーが行われました。せんだいメディアテークは今年で開館10周年、地下準備室を中心に展開してきた活版塾も節目の時を迎え、監修者であるグラフィックデザイナー、小泉均さん(http://htypo.net/)とも長いおつき合いになります。
 この日は7階のスタジオaにて行われ、お隣のスペースではシニアパソコン講座が開かれていました。伝統的な技術を後世に伝えていくためのオールドメディアと、最先端の知を追求するためニューメディアが、開放的なフロアに存在し、若者から年配の方までが熱心に学ぶ姿は、まさにメディアテークらしさ溢れる光景でした。
今回のワークショップはビギナー向け。始めに、毎年このワークショップに関わってくださっている小出尚喜さんとインターンシップ生のTくんによる実演を交えながらの説明があり、参加者の皆さんも制作を進めました。
 テーブルの上には、鉛でできた活字がずらりと並んだレトロな木箱があります。サイズが1号(正方形の一辺が10mm)の活字で「また,おいでね」「もりのめぐみ」と組まれたものが用意されているので、4号(正方形の一辺が5mm)の活字部分を、自分の名前や好きな言葉に組み替えて版を作ります。まず、欲しい活字を見つけて集めます。これを、活字を「拾う」と言います。漢字を見つけるのにはとても時間がかかってしまうので、このワークショップでは、ひらがなとカタカナから選びます。次に、「組版ステッキ」という専門の道具に活字を並べ、寸法に合わせて活字の間や左右に、「インテル」という何も字が掘られていない背が低い鉛を入れて調節します。普段は携帯電話やパソコンで打つと、つらつら繋がって表示される文字も、活版印刷ではインテルが入ることでリズムが生まれるので、どのくらい文字間を空けるのかセンスの見せ所でもあります。崩れないように指にぎゅっと力を込めて、組んだ活字を組版に入れます。これを、活字を「植える」と言います。まるで木を植えるみたいです。組版には以上のような作業で植えられた活字が段々になって「チェース」という金属枠の中にきっちりと入っています。活字の高さを揃えるために、組版の上に木をのせて木槌でとんとんと軽く叩きます。活字がぽろっと落ちてしまわないように、ねじ式のジャッキを念入りに閉めます。
 さあ、とうとう印刷です。今回使うのはイギリス製のADANAという印刷機です。チェースを取り付けて紙をセットします。ハンドルを引くとガッシャンという懐かしい音がしてローラーが回転し、活字の表面に青いインクがついたと思ったら、一瞬で紙に刷られてしまいます。参加者の皆さんは、念入りにインクをつけてみたり、薄付きにしてみたり、紙の種類を変えてみたりと、手動の変化や風合いを楽しんでおられました。
 完成後、出来上がった作品を書画カメラに映し、発表会をしました。活版ならではのアクシデントが味わい深い表現に生まれ変わっていました。例えば、ひらがなの活字がひとつ足りなかったので言葉の言い回しを変えたり、カタカナの語句の中にひとつだけひらがながあったり、誤って鏡文字に植えてしまったりということです。中でも印象的だったのは、小学生の方が印刷機から紙を取り出す時にうっかりインクをつけてしまったのですが、それがちょうど良く小鳥の絵の樹脂版と合わさって、地面のように見えるという発見をしたのです。こういった偶然の演出も柔軟な発想で迎えられ、素敵な作品が仕上がっていました。
 レクチャーでは小泉さんと小出さんの対談形式で、メディアテークと共に歩んできた10年間を振り返りつつ、活版について書かれた本の書評を軸に、書体設計からZINE(有志の人々が制作する同人誌のような小さな本)に至るまで様々なお話が展開されました。近年、活版印刷の人気が特に高まってきているそうで、ここ2年の間に新刊がなんと8冊も出版されたそうです。小泉さんが、難しい〜優しいまでのバロメータつきで、初級者から上級者まで楽しめるよう、レビューを作ってきてくださいました。お二人のお話をお聞きして、人間の手からものが生み出され、メディアとして人々に届けられるまでの裏側を垣間見ることができた気がします。
 さて、今年で10年目を迎えた活版印刷ワークショップ。次の10年を目指し、多くの人が活版に触れ、伝承、保存されていくことを願います。ご興味をもたれた方は、次回ワークショップや見学ツアーにぜひご参加ください。

東北芸術工科大学 長澤明子

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