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コラム
八木山動物公園で感じる動物のちから

「 いまこの瞬間も、八木山では動物たちが生活している 」。
毎日隣の青葉山で過ごしているのに、これまでこんなに意識することはなかった。しかし実習を終えてからは、ふとした瞬間に動物たちのことが思い浮かんでくる。それは、実習をとおして動物たちの存在感が、強く心に刻まれたからだ。

動物たちの記憶は全身に残っている。間近でエサを食べる音、におい、皮膚の手触り、息の暖かさ、運んだフンの重さ、こちらを見ている瞳の光など。これほどに「生きている」ことを濃密に感じさせる動物たちを、飼育しているというだけでも、動物公園の役割は大きいと実感した。

学外研修の一環として、2月15日から10日間の実習の中で、最も緊張した瞬間は、馴致(じゅんち : 飼育員と獣医師による動物とコミュニケーションを図るトレーニング)を体験するために、アフリカゾウと向き合った時だった。どんな偉い人間相手の面接よりも、自分の本質と価値が測られているだろうと感じた瞬間。ゾウだけではない。ゴリラもカンガルーもツルも、向かい合うと威厳や魅力が圧倒的なのだ。一個体の生き物として、かなわないと思わされた。

飼育員の方々からは、動物と人間の関係を学んだ。飼育員は動物に隙を見せることはない。動物たちには人間の脅威となりうる力があるからだ。しかし一方で、動物たちは飼育員がいなくては生きていけない。猛獣をも管理するだけの力が、人間にはある。互いに相手に勝る力があり、互いに相手が必要な関係。そのなかで双方が安心できるように工夫するのが飼育員なのだと感じた。

動物公園は、動物という特殊な資料形態をもつ博物館相当施設だ。資料と信頼関係を築かなくてはならない苦労は大きい。しかし、だからこそ動物公園にしかない心温まる魅力があり、資料の見せ方の可能性も広がっていくのではないだろうか。

最終日(2月28日)には、来園者に対してのガイドも経験した(『大人のための動物観察会-ホッキョクグマ-』)。自分の中に、動物からもらった記憶がどんなに満ちていても、聴衆に楽しんで聞いてもらうために最も重要なのは、魅力ある伝え方。そんな課題を感じる私の隣で、プールに飛び込むホッキョクグマは、その存在だけで来園者に魅力を伝えていた。本当に動物にはかなわない。そんな動物たち自身の伝える力を活かしながら、人間の言葉で更に深く解説していくようなイベントの重要性を理解した。

この先、生き物の不思議さと大切さを多くの人の心に届けたい。伝える技術も自分の中身も、もっと高めていくつもりだ。一人のヒトとして、かなわないと感じた動物たちと肩を並べられるくらいになることが、これからの私の目標になった。

東北大学大学院 生命科学研究科 高柳真世

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