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コラム
お猿電車で行く博物紀行Vol.3 「遊園地の電車ザルが動物園のボスザルへ転身?」その2

がったんゴトゴト、がったんゴトゴト、キキキーッ!本日もデン吉の電車にご乗車ありがとう!さて、1回目に紹介した浅草花屋敷からやってきた動物たちの話を覚えてる?評定河原の動物園で子供たちを随分楽しませたんだけど、終戦間近の昭和19年食糧事情の悪化もあって閉園を余儀なくされ、結局猛獣たちは銃殺されてしまったんだ。その後仙台には立派な動物園がなくなってしまったけれど、動物の人気は根強かった。昭和28年10月には西公園で「河北動物博覧会」が開かれてずいぶん人気を博した。英国ライオン・ショーが呼びもので、「世界各国の猛獣珍鳥148種類、500余頭の大公開!」と謳い、お猿電車、象やチンパンジーの曲芸、名犬ショーなど、仕込まれた動物の妙技で楽しませた。初日の人出は1万5千人。牛や豚、山羊、羊、ウサギなどが当たる大抽選会も行われた。昭和30年にも仙台駅でサーカスの子象が逃げ出す騒動が記録されたりしているよ。

お猿の電車_三居沢こども公園
写真1 三居沢・子供動物園のお猿電車(撮影:長澤秀樹 昭和33年)

昭和32年、いま三居沢交通公園がある場所に待望の市立「子供動物園」ができた。象やライオンはいなかったけど、小動物が子供たちを楽しませたよ。人気はやっぱりお猿電車だった!(写真1)そして昭和36年4月12日、フジオとサキコ(連載vol.2参照)はここにもらわれて来たんだ。

八木山動物公園豆電車
写真2 八木山動物公園中央広場で走っていた豆汽車(提供:仙台市八木山動物公園 昭和42年)

しかし三居沢の動物園はすぐに手狭になって移転することになり、落ち着き先は八木山地区。8年後の昭和40年10月15日にみんなが知っている八木山動物公園が開園した。フジオとサキコの2頭も八木山に移され、別のオスザル1頭と檻に入り、昭和42年にサル山が完成するとそこに放された。サル山には福島県で捕獲された10頭のニホンザルの1群も加わり、八木山動物公園のサル山の始まりさ。お猿電車の方は「豆汽車」と呼ばれて昭和41年4月から登場。1周200mで4両編成30人乗り。主に乗車したのはサキコで、福島の子ザルやチンパンジーが乗ることもあったし、お猿を乗せない時もあったみたい(写真2)。なにしろ人気の遊具だから出ずっぱりの運転はお猿にとっても過重労働ってわけですよ。
これ笑い話じゃなくてさ、後にお猿電車が廃止された理由はまさに「お猿が可愛そうだから」だったんだよ。上野動物園でカニクイザル・チーちゃんが自ら(!)運転する「おサルの電車」(昭和23年)をはじめて以来、お猿電車ブームは全国に広がったけど、昭和48年に国会で「動物の愛護及び管理に関する法律」が成立すると、まず昭和49年に上野動物園がお猿電車を廃止、足並みを揃えるように各地からお猿電車が消え、八木山動物公園でも同年に廃止した。動物園は「自然」を観察する学習施設としての役割を強調するようになり、動物と人間の距離感も変化してきたんだね。
さて、新しくできたサル山のボスになったのがフジオ。普通、人に飼われていたサルが野生の集団に合流すると総攻撃を受ける。あいつら怖いからね。それを従えてしまったフジオはずいぶん偉物だったね。フジオは福島勢の大将との攻防で一度はボスの座を奪われたけど、リベンジ戦で相手を「切られ与三」みたいな姿にするほどやっつけてボスの座に返り咲き、その後サル山を統制し、昭和45年ごろに亡くなるまで長生きした。八木山動物公園にはフジオの頭骨が今も残されているよ(写真3)。

フジオ2
写真3 フジオの頭骨(仙台市八木山動物公園蔵)

サキコの方はフジオに比べて短命だったが2頭の子どもを残した。フジオとの子・イタコが生んだメスがヨモギ(昭和59年生)で、まだサル山で健在だ。八木山のサル山は現在39頭の集団だけど、入れ換えがないので、フジオ達の子孫の血統のままなんだ。サル山を見ながら、フジオやサキコの面影を想像してみることができるかな。
お〜っとっと、気がついたら青葉通一番町から八木山動物公園まで、仙台地下鉄東西線よりおいらの電車が先に開通しちゃいました。チンチーン。

デン吉(サル語通訳・すずき佳子)

 

【今日立ち寄った文献】
河北新報 昭和28年9~10月、および昭和36年4月の記事
『クラシカル仙台』NPO法人20世紀アーカイブ仙台製作・発行 2010年
なぜ、子どもたちは遊園地に行かなくなったのか?』(白土健・青井なつき著 2008年 創世社新書
『八木山の動物たち』根本策夫著 昭和51年 あづま書房

【今日お話を聞いた人】
阿部 敏計さん(仙台市八木山動物公園)

 

すずき佳子(東北福祉大学・鉄道交流ステーション
※このコラムは2012年にウェブサイト「見験楽学」に掲載されたものです。

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