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SMMA見験楽学ツアー⑮「片平キャンパス歴史散歩」レポート

ミュージアムスタッフの視点から、仙台・宮城の知られざる魅力を探るツアー企画「SMMA見験楽学ツアー」。第15回は、東北大学史料館 准教授の加藤諭先生を案内人にお迎えし「片平キャンパス歴史散歩」を実施しました (2019年5月25日)。

片平キャンパスを巡るツアーは今回で3回目です。第8回SMMA見験楽学ツアー「片平キャンパス歴史散歩」(2017年)第13回SMMA見験楽学ツアー「片平キャンパス歴史散歩」(2018)が、とても好評だったので、引き続き実施できることになりました。これまでは秋に開催していたのですが、今回は初めて5月に開催するとあって、一味違う緑豊かな片平キャンパスの散策となりました。


▲今回のツアーでは、東北大学史料館の企画展「大正・昭和のはじまりと東北帝国大学」やバックヤードを見学した後、片平キャンパスの敷地内にある旧制二高に縁の深い建築や記念碑、像を中心に巡りながら、片平キャンパスの歴史を紐解いていきました。

 
▲こちらは集合場所となった「東北大学史料館(旧東北帝国大学附属図書館閲覧室)」です。史料館は、東北大学に関する記録文書や、歴史的な資料を保存・公開しています。また、建物も1926年に旧東北帝国大学附属図書館の閲覧室として建てられた歴史あるもので、2017年に登録有形文化財に登録されました。展示室がある2階部分では、特徴的な高い天井などの凝った造形を今でも体感することができます。

 
▲今回も案内人をつとめていただく加藤先生。先生の案内で、普段中々立ち入る機会の無いバックヤードから2階の展示室へと向かいました。

 
▲展示室で最初にご案内いただいたのは、企画展「大正・昭和のはじまりと東北帝国大学」のコーナーです。こちらは「令和」への改元を記念して開催されたミニ企画展で、「大正」、「昭和」が始まった時に行った儀礼の装束等を見ることができます。格式高い展示資料を眺めていると、加藤先生が展示していた「笏(しゃく)」「袴」をケースから取り出し、「ぜひ実際に触ってみて下さい」と声をかけて下さいました。加藤先生曰く、史料館などのアーカイブを目的とする施設は、資料を展示して公開するのと同様に、調査・研究する機関としても重要な役割を担っており、申請すれば実際に資料を閲覧し、手に取ることができるのが特徴だそうです。

 
▲普段中々触れる機会の無い資料を前に、最初は参加者のみなさんも「素手で触っても良いんですか!?」と、とまどっていましたが、実際に手にすることで「この触り心地は何の木材だろう」や「生地にとてもハリがある」など、触れることでしかわからない感想を嬉しそうにお話されていました。

 
▲他にも、東北大学の歴史をテーマに時代ごとの大学や学生の様子を紹介する常設展示「歴史の中の東北大学」のコーナーでは、旧帝国大学の成績優秀者に送られる「恩賜の銀時計」や、旧制二高の応援団員が履いていた「高下駄」なども実際に触らせていただきました。貴重な資料ばかりで、みなさんどれも興味深そうでしたが、中でも「恩賜の銀時計」は、「当時のエリートが手にしていた時計なので、触れると”頭が良くなる”、”出世が早くなる”などの御利益があるかもしれません!」という加藤先生のお話を聞いて、喜んで手にされていました。

 
▲常設展示「魯迅記念展示室 魯迅と東北大学—歴史の中の留学生—」では、中国近代を代表する文豪・思想家である魯迅が、1904年に仙台初の外国人留学生として東北大学医学部の前身である「旧仙台医学専門学校」に留学した際の資料を展示しています。この日は、加藤先生に魯迅の成績表をご紹介いただきました。成績表を見てみると、魯迅の恩師として有名な藤野先生の解剖学で低評価の”丁”をとっていたり、テストの結果が142人中68番だったということが分かり、参加者のみなさんは初の外国人留学生として慣れない環境の中、努力していた魯迅を偲んでいました。

 
▲展示室に続いて、1階にある史料館のバックヤードをご案内いただきました。史料館は、東北大学の公文書を管理するという重要な役目も担っており、こちらの書庫には歴代の公文書に加え、研究室などで使われなくなった重要な文書が毎年追加で保管されていくそうです。ここでは、東北大学の入試問題を見せていただきました。中には、今は実施していない二次試験の社会など歴史を感じさせる科目もあるそうです。

 
▲史料館の見学後は、いよいよ片平キャンパスの散策に出発です。この日は天候にも恵まれ、春の陽気と美しい緑に囲まれながら、気持ちよく散策することができました。まず最初に訪れたのは、「第二高等学校記念苑・蜂章の碑」です。ここでは旧制二高の同窓会が建てた校歌碑・蜂章碑と、移築された煉瓦造りの校門を見ることができます。

 
▲旧制二高の校章は”蜂”がモチーフになっていますが、厳密な規格は一切無く、”蜂”であれば何でも良かったようで、加藤先生が把握しているだけでも40種類はあるそうです。確かに、よく見てみると校章碑と蜂章碑の”蜂”の形が異なっているのが分かります。加藤先生曰く、旧制二高の気風である、規律や細かいことに捕らわれない精神が、校章の”蜂”からもよく見て取れるそうです。

 
▲次に訪れたのは、「文化財収蔵庫(旧第二高等学校書庫)」です。中にはおよそ20万点の文化財が収蔵されており、調査・研究に活用されています。元々は旧制二高の書庫として使用されており、仙台に現存する明治維新後に建てられた貴重な赤レンガ建築だそうです。デザインも個性的で、窓の配置や装飾が建物の4つの側面全てで異なるなどの工夫が施されています。残念ながら一般公開されていない施設なので中を見ることはできませんが、収蔵庫の隣には、現地から移された経ノ塚古墳台町古墳群の石棺があり、こちらは自由に見学することが出来ます。

 
▲次に訪れたのは”蛮カラ”な出で立ちの二高生をモチーフにした「尚志像」です。1986年に旧制二高の創立百周年を記念して同窓会「尚志会」が中心となり制作したそうなのですが、その際に首元の襟章のデザインについて、「当時大多数を占めていた理系(science)の学生を表す「S」の襟章をモチーフにするのは面白くない!  二高らしくない!」という声があがったため、少数派の文系(liberal arts)を表す「L」の襟章がモチーフとして採用されたそうです。大学の歴史を研究している加藤先生ならではの旧制二高や東北大学の気風を交えた解説を、参加者のみなさんは面白そうに頷きながら聞き入っていました。

 
▲当初の予定にはありませんでしたが、この日は特別に加藤先生の案内で、普段立ち入ることができない「エクステンション教育研究棟」の屋上に上がらせてもらい、片平キャンパスを眺望することができました。

 
▲ここでは加藤先生から、正門まで一直線に伸びる大通りを中心に、片平キャンパスがどのように拡張・整備されてきたか説明を聞きつつ、屋上の花壇と、素晴らしい眺めに心癒やされる一時を過ごしました。

 
▲最後の目的地に向かう途中にも、「東北大学本部棟1(旧東北帝国大学理学部化学教室棟)」と、その特徴であるスクラッチタイルや、実は片平キャンパス内に現存する最も古い建物である「旧第二高等中学校物理学階段教室」など、片平キャンパスの歴史豊かな建築物をご紹介いただきました。

 
▲そして最後に訪れたのは、1904年に作られた「東北大学本部棟3(旧仙台医学専門学校博物・理化学教室)」と、その廊下を通り抜けた先にある魯迅の階段教室(旧仙台医学専門学校六号教室)です。実は建築当初、「魯迅の階段教室」と「旧仙台医学専門学校博物・理化学教室」の東側はつながっており一つの建物だったそうなのですが、キャンパス整備に伴う増改築を繰り返す中で、「魯迅の階段教室」が切り離され、現在の位置に移築されました。「魯迅の階段教室」の正面の外壁を見ると今でも結合部の跡を見ることができます。


▲中に入ってみると、階段状に上がる作り付けの机と椅子が特徴的な教室が当時の雰囲気をそのままに残されています。教室には、魯迅と藤野先生の写真が飾られており、魯迅は中央の前から3列目の席で、よく講義を受けていたそうです。この日、運良く魯迅の席に座っていたのは、人では無く参加者の女性の帽子でしたが、持ち主の方は幸運の帽子を手にとても喜ばれていました。これまでに見学に来たほとんどの方も、記念にこの魯迅の席に座るそうで、1988年に江沢民国家主席(当時)が来学した際にも、魯迅の席に座り想いを馳せていたそうです。「魯迅の階段教室」は学術目的に限り、事前にお申し込みいただければ見学することができますので、ぜひ魯迅が藤野先生に学んだ教室を訪れてみて下さい。(※見学申込みはこちらをご覧下さい。)

2時間のツアーでは足りないほど、歴史的建築物や、人物など見所が満載の片平キャンパスでしたが、参加者の方から「一般の人がキャンパス内に入れることを知らなかったので、今度は友達を誘って散歩に来たい!」や「史料館がこんなに魅力的な施設とは知らなかった!次の展示も見に来たい!」など嬉しいお言葉をたくさんいただきました。東北大学史料館では、大学の歴史を紐解く企画展示や講演会、片平キャンパスの魅力を伝える「片平キャンパス建物ツアー」など様々な企画を実施していますので、ぜひまた足をお運び下さい。

 
▲当日、参加者のみなさまにお配りしたしおりです。こちらからダウンロードできますので、しおりを手に片平キャンパスを巡ってみて下さい。また、東北大学の生協では、東北大学史料館の常設展示「歴史のなかの東北大学」と「魯迅記念展示室 魯迅と東北大学」の内容をまとめたガイドブックを販売していますので、ぜひこちらもご利用下さい。

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(事務局・帖地)

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