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ミニ企画展「お帰りなさいミス宮城〜答礼人形と青い目の人形〜」レポート

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ツツジの咲き乱れる今日このごろ、みなさまいかがお過ごしでしょうか。SMMA事務局吉田です。
GW1日目は榴ヶ岡公園に立つ仙台市歴史民俗資料館にて開催されました、
ミニ企画展「お帰りなさいミス宮城〜答礼人形と青い目の人形〜」(5月1日〜6日)に行ってまいりました。

 

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鯉のぼりの泳ぐ仙台市歴史民俗資料館。この日はお天気にも恵まれ、たくさんの子どもたちが公園で走り回ったりお弁当を広げたりしていました。

 

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ミニ企画展の看板もツツジ色です。(参考:公園内に咲いていたツツジ)

 

今回のミニ企画展で取り上げられた「青い目の人形」とは、昭和2年(1927)に日米親善のために米国から贈られた12,739体の「友情人形」のことです。現在では日本全国で331体、宮城県では10体の現存が確認されています。
「ミス宮城」はその「青い目の人形」の返礼として日本から贈られた、58体の「答礼人形」のひとつでした。現在は米カンザス州のドロシー・バーキー氏が所有しており、今回の里帰りは2003年以来二度目になります。
今回の展示では「ミス宮城」や、東日本大震災で被災した「青い目の人形」ナンシーちゃん、宮城県内で現存している「青い目の人形」ステラ・ローラネルちゃん、2000年代に贈られた新友情人形が、展示ケースのなかから来館者を出迎えてくれました。

 

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「ミス宮城」は身長83cm。この身長は現代でいうと2歳くらいの女の子と同じ身長です(参考:日本小児分泌学会)。紫色の華やかな着物を着てすっくと立つ姿にこそ、日本から友好の使いとしてアメリカに渡ったお人形らしい凛々しさがありましたが、じっと見ればふっくらとした白い頬やちょっと伏せられた黒い目が可愛らしい女の子でした。実は正座できるように造られているそうで、着物に隠れた足はとても長いのだとか。
また「青い目の人形」ステラ・ローラネルちゃんは、日本に渡った当時のパスポートや切符、夏用と冬用の洋服も共に展示されていました。当時の資料がこれだけ揃っているケースはとても珍しいそうです。

 

さらに今回の企画展では、「青い目の人形」がいかに戦争を乗り越え、現在まで生き残ったかを描いた、
紙芝居「青い目の人形ものがたり」が演じられました。
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「青い目の人形ものがたり」は、現在の登米市立上沼小学校に残されている「青い目の人形」メリーちゃんの話をもとに制作されました。
日米親善のために贈られたはずの「青い目の人形」でしたが、昭和10年代にアメリカと日本との戦争が激化するにつれ、アメリカからきた「敵国のスパイ」として憎悪の対象となっていきました。
「青い目の人形」の多くが失われたのはそのほとんどが、こうした時代に燃やされたり破壊されたりしたためだといいます。
昭和18年(1943)、当時の上沼国民学校上沼分校に勤めていた加藤先生と、用務員の菅原さんのもとにも、「青い目の人形」メリーちゃんを焼却せよとの命令が下りました。

 

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「灯りのない真っ暗な職員室で木の箱から人形を出した時、人形は「マンマー」と声を出した。
その声は、二人には「焼かないで」と訴えているように聞こえた。」(展示内資料より)

 

加藤先生と菅原さんは、メリーちゃんを職員室の戸棚と背後の壁の間に隠すことにしました。
翌日人形を焼いたか確認をしにきた警察にも見つかることなく、メリーちゃんは戸棚の後ろに隠されたまま戦時中を生き延びたのでした。

現在まで「青い目の人形」が生き残っているのは、このように戦時中に人形を守ろうとした人々がいたからだといいます。
「青い目の人形」は、かつて日本とアメリカの子どもたちが抱いていた日米親善の志と、戦時中の人々の心を、現代に伝えています。

 

 

 

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歴史民俗資料館では、6月14日(日)まで企画展「暮らしの中のリサイクル〜明治・大正・昭和〜」が行われています。かつての暮らしの中で人々がどのように物を大切にし、再利用してきたのか、その暮らしの一端を見ることができます。

 

ものを「作り」、壊れたら「直す」かつての暮らしは、ものを「買い」、壊れたら「買う」のが当然になってきている今の暮らしとかけ離れているように思えるかもしれません。しかし歴史民俗資料館では、収蔵資料と現代の生活用品が並べて展示されている光景をしばしば見かけます。今回の企画展でもそうした展示を見ることができます。資料になったものと、今も使われているものは、暮らしという歴史のなかでたしかに繋がっているのです。
現代に繋がる人々の知恵と工夫を、歴史民俗資料館でごらんください。

 

ちなみにおすすめは「ツト」です。特に卵用の「ツト」、ちょっと欲しいです。

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