見験楽学 さまざまな発見や体験を通じ、楽しく学ぶ。仙台・宮城のミュージアム情報サイトです。

SMMA東日本大震災 ミュージアム被災と復旧レポート
仙台・宮城ミュージアムアライアンス事務局
〒980-0821 仙台市青葉区春日町2-1
(せんだいメディアテーク内)
電話:022-713-4483
ファックス:022-713-4482
電子メール:office@smt.city.sendai.jp
museum
museum
特別展「ご覧あれ 浮世絵の華―歌麿・北斎・広重 平木コレクションの名品」レポート

IMG_1083
まだまだ暑い今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。SMMA事務局吉田です。

今月の見験楽学はスリーエム仙台市科学館の特別展「体感!スポーツ研究室 ―アタマとからだで運動をときあかせ!―」や、仙台文学館の「11ぴきのねこと馬場のぼるの世界展」など、夏の暑さを吹き飛ばす展覧会をレポートしてきました。
今回は趣向を変えて、夏の暑さを避けてゆったり楽しむ展覧会をレポートしたいと思います。
仙台市博物館で開催中の特別展「ご覧あれ 浮世絵の華 ―歌麿・北斎・広重 平木コレクションの名品」(7月17日(金)~9月6日(日))です。

IMG_1084
(展示室入口で真っ赤に光る「まさつや」=三代目大谷鬼次)

 

今回出展されている「平木コレクション」とは、公益財団法人平木浮世絵財団の創設者・平木信二氏による約6000点のコレクションのこと。浮世絵の創始者・菱川師宣から近代の橋口五葉、伊東深水にいたるまで、浮世絵、日本木版画の歴史を通覧できるコレクションとなっています。
そんな平木コレクションの母体となったのは、戦前優れた浮世絵の三大コレクションとして知られていた「斎藤コレクション」「三原コレクション」の二つでした。浮世絵は海外でいち早く評価が高まり、現在も多くの作品が海外のミュージアムに収められていますが、斎藤・三原コレクションもまた、戦後の混乱期に海外流出・散逸の危機に瀕していました。これを日本に留めるべく買い入れたのが故・平木信二氏であり、平木氏は多くの人に浮世絵の素晴らしさを知ってもらうことを目的として、昭和47年(1972)に財団法人平木浮世絵財団を設立したのです。
今回の特別展はそんな平木コレクションの中から選りすぐりの作品をご紹介。絵師はもちろんのこと、彫師や摺師の技術にも注目してもらえるような展示になっています。

 

でも具体的に彫りや摺りのどんなところに注目したらいいのか?
そのヒントを探りに8月9日(日)、伝統木版画摺師の三田村努さんによる「浮世絵摺り実演」に行ってきました。

IMG_1046
会場いっぱいに押し寄せた人たちが、三田村さんの動きひとつひとつにじっと見入っています。

IMG_1048 IMG_1078
その妙技をカメラに収めようとしたのですが、何度撮っても映るのは右手の残像ばかり。どうにも上手にシャッターが切れません。
額の汗を拭き拭き、版の上にぐっと身を乗り出して絵の具を刷り込み、馬連で摺る。三田村さんの淀みない動きに、つい息を詰めて見入ってしまうのであります。
三田村さん曰く、1日で摺ることのできる絵の枚数には限界があります。その理由は時間や体力ではなく、版木にありました。絵を摺り続けていると版木が絵の具の水分を吸ってだんだん膨らんでいき、見当が合わなくなって版がずれてしまうのだとか。それでも1日200枚は摺れるそうです。

IMG_1025
頭上のスクリーンに映し出された机上には、絵の具や摺りの道具が並んでいるのが見えます。

IMG_1056
IMG_1063 IMG_1065
会場では、絵の具を版木に塗る刷毛や摺りに使う馬連に触れることもできました。
摺りの道具は展示室内でも観ることができます。

 

そして会場では摺り上がった浮世絵に触れることもできました。
今回三田村さんが摺り上げたのは、喜多川歌麿による「高名美人六家撰」のひとつ「扇屋花扇」。画像は掲載しませんが、これが本物の浮世絵かー、と紙を触っていて気づいてしまいました。
ぽこぽこしていました!
花扇の真っ白な衿の部分に、紙のぽこぽこした凹凸によって模様が表されていました。
しかも花扇が持っている巻かれた手紙の断面も、凹凸による線で表現されているではありませんか! 平面の浮世絵に立体の表現技法があったとは驚きです。果たして書籍や教科書に載っている画像で、この凹凸の表現が伝わるでしょうか。

この後に展示内の解説を読んで知ったのですが、これは無色で版を摺ることにより模様や線を凸線で表現する「空摺(からずり)」と呼ばれる技法なのだそうです。服のひだや文様、波文や鳥の羽毛などをより精緻に表現する手法として、錦絵(多色摺り木版画)の草創期に鈴木春信によって盛んに用いられました。
鈴木春信といえば、今回の特別展で「坐鋪八景」や「鷺娘」など多くの作品が展示されている絵師のひとり。もちろん展示品にも空摺の技法が使われています。

また今回の展示では、最初は黒一色で摺られていた浮世絵が、筆で塗ることによる表現、赤と緑の二色摺り、錦絵と呼ばれる多色摺りへと「色」を変化させていく過程も見ることができます。
本物を自分の眼でじっくり見るからこそ分かる絵師の工夫、彫師と摺師の腕前を、ぜひ会場でお確かめください。

 

さて特別展では8月11日(火)から後期展示が始まっています。
後期展示では、前期展示で8枚中4枚のみ展示されていた歌川広重の「江戸近郊八景」、鈴木春信の「坐鋪八景」の残り4枚が公開されています。また石川豊信の「花下美人」や喜多川歌麿の「歌撰恋之部 物思恋」など、後期のみ公開される作品もありますので、前期展示を観た方ももう一度出向かれてはいかがでしょうか。

 

特別展「ご覧あれ 浮世絵の華 ―歌麿・北斎・広重 平木コレクションの名品」は、9月6日(日)まで開催しています。

 

LINEで送る
Pocket