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企画展「車掌のしごと」レポート

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車内アナウンス風に始めてみたい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。SMMA事務局吉田です。
今回は東北福祉大学・鉄道交流ステーションで開催中の企画展「車掌のしごと」のようすをご紹介します。

 

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今回の展示は、歴史とともに移り変わってきた車掌の仕事の変遷や、国鉄時代から現在までの車掌の仕事道具などを紹介しながら、あまり知る機会のない「車掌のしごと」に迫る内容となっています。

 

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多くの人にとって車掌とは、切符を確認したり車内放送を行ったり、列車の乗客に寄り添う仕事というイメージが強いのではないでしょうか。
しかし今も昔も、車掌の最も重要な仕事は列車を安全に運行することです。
日本で初めて鉄道の運行が始まったのは明治5年のこと。明治初期の車掌は列車の最後部の車両に乗り込み、列車内を管理すること、機関士と合図を交わして運転の安全を守ることが主な仕事でした。当時の車掌が「guard」という英単語をオランダ風に発音して「ガールド」と呼ばれていたことからも、安全を守る技術職としての色合いが強かったことがうかがえます。

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車掌の本来の仕事を考えるヒントになるのが、かつて貨物列車に乗っていた貨物車掌(貨物掛)の存在です。
ふだん旅客として列車を利用する機会が多い私たちは、車掌を「乗客のための仕事」と考えてしまいがちですが、国鉄からJRに分割民営化する直前まで、貨物列車にも貨物掛という専用の車掌がいたそうです。旅客列車よりも長編成で重量もある貨物列車は、その長い車体を貨物基地に収めるだけでも大変です。加えて分岐駅で行き先ごとに正確に貨車を入換する作業を行うには知識と経験が不可欠でした。
乗客を扱うにしても、荷物を扱うにしても、運転士と息を合わせ「安全運転のための仕事」を勤める車掌はとても重要な役職だったことが想像できるのです。

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ガールドはその後「車長」「車掌」と名称を変え現在に至っています。ちなみに現代における車掌の英語訳は「guard」ではなく「conductor」。日本の車掌が「guard=警護する」から「con(=together=ともに)+duct(=lead=導く)=conductor」といった単語に変わった理由を考えてみるのも面白いかもしれません。

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一方、旅客列車に乗り込む車掌は専務車掌に昇級する際、客扱いを専門にする乗客専務(カレチ)と、客車便で運ぶ新聞雑誌や手荷物を扱う荷扱専務車掌(ニレチ)に分けられたそうです。特に車掌職の花形と言われたのは特急列車に乗り込む乗客専務。長距離を移動する乗客への案内や、列車遅延などのトラブルにも臨機応変に対応できるよう、運賃・路線・運行時刻など多くの知識と高い能力を必要とする職業でした。乗客専務は旅客列車のプロフェッショナルとして、車掌職に就いた人たちの憧れでもあったそうです。

 

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そして車掌は現代も安全な運行のために日々の業務に勤めています。
こちらは「車掌さんの一日」のコーナー。福島交通(株)飯坂線で働いている新米車掌さんの一日を写真で紹介しています。
飯坂線は現在も全ての列車を運転士と車掌のツーマン体制で運行している路線のひとつ。沿線の図書館や高校に通う人、福島市の中心街に通勤する沿線住民によって、毎朝10時頃まではラッシュが起こるほど利用されている路線です。
ところが午前10時を過ぎると、飯坂線全12駅のうち9駅は駅員がいない無人駅になってしまいます(泉駅・花水坂駅は常時無人駅)。

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そこで飯坂線では、なんと車掌が列車から無人になった駅のホームに降り立ち、下車する乗客から切符を直接回収(集札)します。ホームに降りた車掌さんは集札をしながら、導入されたばかりのICカードの使い方を案内したり、駆け込み乗車がないか確認したり、ドアを閉めていいですよと運転手に合図を送ったり……といった一連の仕事をしつつようやくもとの列車に乗り込みます。
ひと息つく暇もなく、車掌は次の駅での集札に対応するため、駅の改札口にいちばん近いドアまで車内を移動します。しかし改札口の位置関係は駅によってバラバラ。そのため車掌は駅ごとの位置関係を頭に入れておき、次の駅に着くまでに効率良く移動します。揺れる列車のなかを乗客にぶつからないよう歩くのは、バランスをとるのが難しくなかなか緊張するそうです。
ちなみに、一日に乗務する列車は7〜8往復。たいへんな重労働ですね。

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今回展示されている写真は、学芸員の鈴木さんが入社一年目の車掌さんに一日同行して撮影したもの。熱心に仕事をする車掌さんの横顔や、飯坂線ならではのスポットなど、車掌さんの日常をとらえた写真が並んでいます。新米車掌さんの一日を一緒に追いかけてみてください。

 

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さらにこちらでは車掌による仙山線の車内アナウンスを聞くことができます。アナウンスには乗客に内容を分かり易く伝えるためのルールがあるので、キャプションでルールを把握してから注意深くアナウンスを聞いてみると、「なるほどなあ」と思うポイントがいくつも見つかります。ふだんは聞き流してしまいがち?な車内アナウンスに耳を傾けてみてはいかがでしょう。

 

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このほかにも展示室には、いまは見かけることも少なくなった国鉄時代の車掌の仕事道具や車内補充券、実際に車掌が身につけていた制服・制帽などがずらりと展示されています。
画像上段左:国鉄の車補パンチ。梅の小花のようなパンチ跡がかわいいです。
画像下段右:福島交通・飯坂線の車掌の制服。裾や襟元に年季が感じられます。

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ちなみにJR在来線車掌の制服は、6月1日(水)から夏服に衣替えしたそうです。こちらもお見逃しなく。
(写真提供:鉄道交流ステーション・鈴木さん)

 

またなかなか見るチャンスのない、現在のJRの車掌さんが携帯している「車内補充券発行機(車補端末)」も展示されています。かつては車掌鞄いっぱいに入っていた七つ道具の役割が、いまやこの端末ひとつに収まってしまうのかと時代の進歩を実感します。
そして、以前は切符で管理されていた乗越精算などの仕事が、IT機器の発達でどのような変化を遂げたのかもご紹介。新幹線で切符を検札しないのはなぜなのか、驚きのしくみに注目です。

 

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企画展「車掌のしごと」は2016年7月2日(土)まで開催中です。鉄道交流ステーションで、知られざる「車掌のしごと」に迫ってみませんか?

 

 

◆おまけ〜鉄道模型館近況報告〜

鉄道交流ステーションに併設されている鉄道模型館は、企画展会期の毎週土曜日に開館しています。取材当日は開館日でしたので久々に足を運んでみたのですが、視界に入ったある光景に足が止まりました。

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(なにかそびえ立っている————!?)

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昨年の夏に撮影した写真(左)と比べると明らかに螺旋状の線路が増えています。
これはいったい……?

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模型館を運営しているボランティアの皆さんによると、この螺旋状の線路は現在建設中のアプト式鉄道「スカイトレイン」。撮影のため少しだけ列車を動かしていただいたのですが、自分より大きな車両を押して長い山道をぐいぐい登る姿がなんとも味わい深い鉄道でした。

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鉄道が前のめりに傾いているのが伝わるでしょうか?これは山道を登るために必要な姿勢だそうです。ちなみに後ろ向きに進むこともできます。

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新しいのは線路だけではありません。音楽を流しながら七色に光るライブ列車や、ドイツで走っていたというマリオネット人形のラッピング車など、 運行中の列車模型にも新しい顔ぶれが見られました。

 

残念ながら、鉄道模型館はメンテナンスにより6月〜7月はお休みです。パワーアップした8月以降の開館を楽しみにお待ちください。

 

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