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SMMAトネマ「フェルメールとエリセをめぐって」トークレポート

晩秋の仙台にオランダの画家・フェルメールの絵画がやってきた。宮城県美術館で開催された「フェルメールからのラブレター展コミュニケーション:17 世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ」には多くの人が足を運び、芸術の秋を大いに楽しんだ。コミュニケーションをテーマに計41 点の絵画作品が展示された。中でも≪手紙を読む青衣の女≫は日本初公開であり大きな注目を集めた。

この展覧会にあわせ、SMMA トネマ「フェルメールとエリセをめぐって」が催された。「トネマ」では、あるトピックについて、3つのアプローチで迫る。話を聞いて(トーク)、映画作品を観て(シネマ)、本物(ナマ)を見る。その順序は参加者次第だ。

フェルメールが生涯に残した作品は数少ないものの、様々な芸術家にインスピレーションをもたらしている。映画監督ビクトル・エリセの作品にも、その室内や人物をとらえる画の構図、また光と陰影の表現において、フェルメールの作品と合い通じるものがあるという。そこで、フェルメールが展示されている期間に合わせ、街中の映画館、桜井薬局セントラルホールではビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』が公開された。また、せんだいメディアテークでは、宮城県美術館副館長の有川幾夫氏とビクトル・エリセ監督と交友が深い映画作家・映画評論家の宮岡秀行氏が、映画と絵画という分野の異なる作品を、フェルメールという画家を軸にしてトークセッションを行った。当日は短編映像作品の上映もあり、多くの来場者がフェルメール絵画を機に映画作品にも触れた。

今回のトークで印象的だったのは、「作品に通うものがあるかどうか」という有川氏の一言である。繋がりのないものどうしが、日常的な経験からふとした瞬間に繋がる時があるという。会場ではスライドショー形式で、フェルメールの絵画とビクトル・エリセの映画を見比べた。エリセの『ミツバチのささやき』で、部屋のドア枠が一直線に何重にも奥へ重なって見える場面は、フェルメールの絵画にも同じような構図が見られる。しかし、「通うものがあるかどうか」というのは、技巧や構図が共通しているのを示すのではない。フェルメールの絵画やエリセの映画に触れたときに感じた「感覚」から共通項を見出すことをいうのだという。宮岡氏は「作品を感じることが重要で、感じるものを創り出せることが素晴らしい」と話す。実際に、エリセの『ミツバチのささやき』は監督自身の幼少期に体験した大きな驚きを映画に落とし込んだものであるという。また、フェルメールが描く数多くの女性と、エリセが尊敬する溝口健二の映画に出てくる女性には「閉じた心理状態、心の不可侵性を帯びた女性の佇まい」を感じると同氏は語る。エリセの映画もフェルメールの絵画も「語り(説明)を必要としない雰囲気」を感じとっている。

作品を目にしたときに感じるものを、有川氏は「内側の手触り」という言葉で表現した。なるほど、作品に潜む何か大きな感情に触れた時、それは柔らかいものであったり、時には鋭く突き刺すような衝撃があったりする。どんな手触りであったとしても、その時に感じた感覚は身体で覚えているから、日常の体験の中で思い出すことがあるのだろう。有川氏も宮岡氏も「詳しく知るより感じることを大切にして欲しい」と話した。そして、エリセ作品とフェルメール作品が共に長い間愛される理由もここにあるという。

フェルメールの作品が仙台を離れると、冬が深くなった。空気はさらに張り詰めて、雪もちらつく。低い雲の間に柔らかい青空を見つけたら、フェルメールの絵を思い出す人もいるもしれない。長い冬が抜けて、やっと春が来て暖かくなった空気を吸ったら、優しい黄色い光が差し込むエリセの映画が、ふと誰かの頭の中をよぎるかもしれない。きっと、絵画や映画だけでなく、詩や音楽もこうして日常にいつの間にか溶け込み、人々の心を豊かにするのであろう。

SMMA トネマ「フェルメールとエリセをめぐって」トーク会場風景(せんだいメディアテーク、2011/11/26)

写真:越後谷出

SMMAトネマ「フェルメールとエリセをめぐって」
●トーク <観かたを知る>
「フェルメールとエリセをめぐって」
講師:宮岡秀行(映画作家・映画評論家)、有川幾夫(宮城県美術館副館長)
日時:2011年11月26日(土)15:00~17:30
会場:せんだいメディアテーク 1階オープンスクエア
上映作品:『ラ・モルト・ルージュ』(スペイン/2006年)、『Victor ERICE on MIZOGUCHI Kenji “The John FORD of Japan”』(日本/2009年)
参加者:120名

●シネマ <映画を観る>
期間:2011年11月20日(日)~11月25日(金)
会場:桜井薬局セントラルホール
上映作品:『ミツバチのささやき』(スペイン/1973年)、『オランダの光』(オランダ
/2003年)、『真珠の耳飾りの少女』(イギリス、ルクセンブルク/2003年)

●ナマ <本物を体験する>
「フェルメールからのラブレター展
コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ」
期間:2011年10月27日(木)~12月12日(月)
会場:宮城県美術館

報告:仙台・宮城ミュージアムアライアンス(SMMA)事務局

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