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開館30周年記念 宮城県美術館・宇都宮美術館所蔵作品による クレーとカンディンスキーの時代
開催期間:2012年01月14日(土) 〜 2012年03月04日(日)
レポートを読む

20世紀を代表する芸術家、パウル・クレー(1879-1940)と
ヴァシリー・カンディンスキー(1866-1944)を中心に、
ユーゲントシュティールからバウハウスまで20世紀前半の美術作品が約260点展示されます。
宮城県美術館・宇都宮美術館所蔵のクレー、カンディンスキー全作品が、
初めて会期中の展示替えなしに公開されます。
宮城県美術館、宇都宮美術館、新潟県立万代島美術館による共同企画です。

開館30周年記念
宮城県美術館・宇都宮美術館所蔵作品による
クレーとカンディンスキーの時代

■会期: 2012(平成24)年1月14日(土)~3月4日(日)9:30~17:00
      (発券は閉館30分前まで)
■会場: 宮城県美術館
■観覧料: 一般1,000円(900円)、学生800円(700円)、小・中学生・高校生300円(200円)
      ( )内は20名以上の団体料金
■休館日: 月曜日

【関連イベント】
クラシック イン ミュージアム’12
震災復興支援 丸山泰雄 チェロ・ソロコンサート

■日時: 2012(平成24)年1月21日(土)16:00開演(15:40~開場)
■会場: 宮城県美術館エントランスホール
■演奏者: 丸山泰雄(チェロ奏者)
■料金: 無料
■申込: 不要
■演奏曲(予定)
 1.P.ヒンデミット; 無伴奏チェロ・ソナタ OP.25,No.3 (1923年)
 2.A.シェーンベルク; 歌曲「心のしげみ」 OP.20より (1911年)
 3.A.ウェーベルン; チェロとピアノのための3つの小品より(1914年)
 4.黛 敏郎; 無伴奏チェロによる「文楽」 (1960年)
 5.Z.コダーイ; 無伴奏チェロ・ソナタ OP.8 (1915年)

まちなか美術講座「ドイツ近代美術への招待」
■日時: 2012(平成24)年2月4日(土)13:00~
■会場: 東北工業大学一番町ロビー 4階ホール
■講師: 小檜山祐幹(宮城県美術館学芸員)
■料金: 無料
■申込: 不要(定員60名)

対談-ふたつの美術館とコレクション
谷 新(宇都宮美術館館長)×西村勇晴(北九州市立美術館館長・前宮城県美術館副館長)

■日時: 2012(平成24)年2月12日(日)13:30~
■会場: 宮城県美術館 アート・ホール
■料金: 無料
■申込: 不要

展示解説
■日時: 2012(平成24)年1月15日(日)14:00~
     2012(平成24)年2月5日(日)14:00~
     2012(平成24)年3月4日(日)14:00~
■会場: 宮城県美術館 2階展示室入口に集合
■講師: 宮城県美術館学芸員
■申込: 不要、「クレーとカンディンスキーの時代」観覧券をお持ちください。

【お問合わせ】 宮城県美術館 TEL:022-221-2111

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レポート
展覧会レポート「宮城県美術館開館30周年記念 宮城県美術館・宇都宮美術館所蔵作品による クレーとカンディンスキーの時代」

日本の地方美術館は、ここまでできるのだ。「クレーとカンディンスキーの時代」展では、その多彩な内容と構成力に、彼らの実力を存分にみることができるだろう。
この展覧会は、パウル・クレー(1879~1940年)とヴァシリー・カンディンスキー(1866~1944年)という二人の作品を中心に、ウィーン世紀末から表現主義、バウハウスまで、20世紀のドイツ語圏の美術を、時代順に5部構成でたどるという内容である。

出品されているのは、すべて宮城県美術館と宇都宮美術館の所蔵する美術作品・工芸品。この二つの美術館は、ともに国内有数のクレーならびにカンディンスキーのコレクションを有しており、宮城では主に二人の作家の絵画作品を、宇都宮ではポスターなどグラフィック・デザイン、バウハウス関連の家具や工芸品など、プロダクトデザインに係る作品を網羅している。今回は、こうした二つの美術館のコレクションを収蔵庫からすべて出して展示しようという初の試みであり、地元ファンとしては、一度に全部見ることができるまたとない機会となる。会場にはおよそ260点にも及ぶ絵画、素描、版画、工芸品、デザイン家具などがずらりと並び、圧巻だ。

fig.1 ヴァシリー・カンディンスキー《商人たちの到着》1905年 宮城県美術館蔵(展示風景)

fig.1 ヴァシリー・カンディンスキー《商人たちの到着》1905年 宮城県美術館蔵(展示風景)

会場で人気を集めているのは、カンディンスキー《商人たちの到着》(fig.1)。宮城県美術館の顔ともいえるお馴染みの作品だが、この展覧会でも図録の表紙を飾る目玉となっている。大きな画面に、サンクトペテルブルクを思わせる城壁に囲まれた都市を背景に、帆船から商人たちが荷をおろし、人々が行き交う賑わいが、色とりどりに描かれている。物語の一場面のようなこの作品世界にいつも惹きつけられるのだが、今回は、一歩ひいて他の作品と見比べていただきたい。カンディンスキーが、ロシアへの郷愁、寓話的な場面描写といった点で、彩色画に限らず、素描や木版画など様々な技法を通じて取り組んでいたことが伺われる。

クレーの作品では、うつろう光を写しとったかのような繊細な筆致の初期素描・銅版画作品に始まり、大小さまざまな彩色画が展示されている。《橋の傍らの三軒の家》(fig.2)、《舞台稽古》など、小ぶりな画面に深い色合いがにじみ、クレー最大の魅力である色彩の魔術を堪能できる。

fig.2 パウル・クレー《橋の傍らの三軒の家》1922年 宮城県美術館蔵

fig.2 パウル・クレー《橋の傍らの三軒の家》1922年 宮城県美術館蔵

そして、クレーのもう一つの楽しみ方は、さまざまな素材や実験的な提示方法を見つけることだ。レオナルド・ダ・ヴィンチが自ら開発した顔料でフィレンツェ市庁舎五百人の間壁画を描いたところ、絵具が壁に吸着せず作品が失われた逸話は有名だ。クレーの方はというと、素描や水彩画を厚紙に貼り付けてみたり、なにやら混ぜものをした糊絵具という独自の顔料を使ったりしている。作品によっては糊や顔料を吸って紙が波打っている様子なども見て取れるので、作家をより身近に感じるのではないだろうか。

展示の終盤には、オスカー・シュレンマーの蔵書票も紹介されている。蔵書票には本を読む人物の横顔が描かれ、古い時代のドイツ語で「オスカーとその妻の文庫用」と書かれていた。この横顔、シュレンマー作品にしばしば登場する特徴的な輪郭なので、向かいに展示されている水彩画《明るい群像》とあわせて鑑賞するとわかるはず。

1970年代以降、日本には各都道府県に次々と美術館が作られ、海外から著名な博物館・美術館の所蔵品を招へいした大規模展覧会が全国を巡回する方式が定着した。こうした流れに対し、今回の展覧会のありかたは、自館や近隣の美術館と地道に集めてきた所蔵品を出し合って構成し、再評価を試みている。予算削減の一途をたどるなか、いわばこうした「ふるさとのたから」をより積極的に活用する方法は、これから美術館が生き残るための事業モデルをしっかりと提示したという点で意義深い。

松葉里江子(SMMA仙台・宮城ミュージアムアライアンス事務局)

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