SMMA参加館の学芸員をはじめ現場スタッフによるとっておきの情報や、地域のミュージアムならではの旬な情報をお伝えする情報誌「旬の見験楽学便」。
そのなかのSMMA参加館にゆかりのある人物にせまる特集「シリーズ人」から、第2回は、井上ひさし(仙台文学館)についてご紹介します。
井上ひさし(1934-2010)
(撮影:佐々木隆二)
昭和9(1934)年山形県生まれ。上智大学外国語学部フランス語科在学中から台本を書き始め、卒業後から放送作家として活動。絶大な人気を誇った『ひょっこりひょうたん島』を手がけた後、戯曲や小説、随筆の執筆に活動範囲を広げ、直木賞や岸田戯曲賞など数々の賞を受賞する。昭和59(1984)年「劇団こまつ座」を旗揚げ。海外からも高い評価を得る作品を多数執筆した。
▲井上ひさし座右の銘
仙台ゆかりの作家として仙台文学館初代館長を9年務める
中学3年生の時に家庭の事情で仙台の養護施設「光ヶ丘天使園」(現ラ・サール・ホーム)に身を寄せ、仙台第一高等学校卒業までの3年半を仙台で過ごした井上ひさし。“仙台で人間としての栄養をもらった”とみずから回想するように、仙台を大切な場所と位置づけていました。その縁あって平成10年4月に仙台文学館の初代館長に就任。翌年3月の開館後は、多忙な中でも来館して講演会や文章講座、戯曲講座を行うなど精力的に活動し、地方の文学館を全国に発信する大きな原動力となりました。
▲トレードマークの眼鏡や万年筆を展示
学芸員の印象に残る初代館長のエピソード
「文学館での打ち合わせ時に、『私の歯形をかたどった栓抜きのグッズはどうですか?』とか『動く展示として、その場で原稿を書いて、販売したらおもしろいんじゃないか』などと笑いながら冗談まじりに提案してくれました」と語るのは学芸室長の赤間亜生さん。一方で10周年のイベントで実施した井上作品のリーディングでは、出演者に「今日はたくさんのお客さんがいるけど、明日は一人かもしれない。それでも今日と変わらず、ベストを尽くしてください」と伝えたことも。作家・井上ひさしが歩んできた長い道のりを思わせる言葉として、赤間さんはとても印象に残っているそう。現場を愛し、人を喜ばせたいという初代館長の言葉や思いは、今でも文学館に息づいています。
▲『青葉繁れる』のプロット
【仙台文学館】
住所:仙台市青葉区北根2-7-1
電話番号:022-271-3020
営業時間:9:00-17:00(展示室入室は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館)、休日の翌平日、1〜11月の第4木曜
入館料:一般460円、高校生230円、小・中学生110円
(文:小原瞳)
※このコラムは2017年7月発行の「旬の見験楽学便」に掲載されたものです。
※仙台文学館についてはこちら。