見験楽学 さまざまな発見や体験を通じ、楽しく学ぶ。仙台・宮城のミュージアム情報サイトです。

SMMA東日本大震災 ミュージアム被災と復旧レポート
仙台・宮城ミュージアムアライアンス事務局
〒980-0821 仙台市青葉区春日町2-1
(せんだいメディアテーク内)
電話:022-713-4483
ファックス:022-713-4482
電子メール:office@smt.city.sendai.jp
コラム
ミュージアム界隈 第4回「ミュージアムトークテラス 第3回『水族館今昔物語~水槽の向こう側~』」

せんだいメディアテーク副館長遠藤俊行が折々に綴るミュージアムとその界隈のレポート。今回は2019年12月に開催された「SMMAミュージアムトークテラス」「ミュージアムユニバース〜すてき・ふしぎ・おもしろい〜」を取り上げます。ボリュームたっぷりの3日間だったので、前後編に分けてお送りします。まずは2019年12月13日に開催された「ミュージアムトークテラス」です。

  

昨年の師走、週末金曜日の夜、光のページェントの柔らかい光が定禅寺通りに溢れる中、SMMA主催のミュージアムトークテラスが開催された。翌日から2日間にわたって開催されるミュージアムユニバースの前夜祭のような趣を持ったイベントとなった。

今回のトークテラスは「水族館今昔物語~水槽の向こう側〜」というテーマで、仙台うみの杜水族館のおふたりの飼育員を迎えてのイベントであった。会場のせんだいメディアテーク1階のクレプスキュールカフェには早い時間から参加者が集まり始めていた。参加者の中にはこどもの姿もあり、水族館サポーターのみなさんの確かな存在感が伝わってきた。

スポットライトを浴びたふたりのプレゼンターは緊張の面持ちながらも楽しそうだ。かつて多くの人々を楽しませてくれた松島水族館の話をしながら、日本の水族館の歴史をわかりやすくひもといてくれる。かつての水族館は「珍しい、ブームを呼ぶような生き物に頼る水族館」だったとのこと。松島水族館では、まずスナメリがVIP的な存在となり、次いで同館を一躍有名にした立役者マンボウのプクプクとユウユウ。そして日本の水族館では一番最初に展示されたラッコ。パンダのような白黒色のリクゼンイルカやイロワケイルカ。フンボルトペンギンやイワトビペンギンなど6種90羽のペンギンたち。これらの生き物たちが主役を担ってきた。

 

これらのスターたちは欲しいといえば簡単に手に入ったわけではない。そこには大変な苦労の物語がある。例えば、「海のパンダ」ともいわれるイロワケイルカの収集活動にサンシャイン国際水族館と鳥羽水族館との共同事業として、各館から1名ずつ職員をマゼラン海峡に派遣したのは1986(昭和61)年の11月下旬のこと。クリスマスまでには帰国できるだろうという当初の目論見はあっさりと裏切られ、結局、イロワケイルカとともに帰国の途につくことができたのは翌年の3月だったとのこと。南アメリカ大陸の南端、荒涼としたマゼラン海峡は強風が吹き荒れるところだ。たとえ出航できてもイルカの群れに遭遇しなければその活動は空振りに終わる。そんな活動に飽くことなく繰り返し挑戦する。ほんとうにたくさんの苦労があったのだろうと推察するに難くない…。

これらのスターたちをいかに捕獲し、無事に運搬して受け入れ、飼育していくか。その苦労を伝えるおふたりの話は、まさに水族館の主役となる生き物たちの、また日本の水族館の草分け的な存在としてリードしてきた松島水族館に働く人たちの、これまでなかなか知られてはいなかった物語として参加者の記憶にしっかりと刻まれたに違いない。

 

プレゼンテーションの中ではかつて松島水族館の正面入り口にあった、昔話の竜宮城を想起させる門をはじめ、いくつもの昔の写真も紹介され、とても懐かしい思いで見ていたが、一連の写真の中に和服姿の女性がスナメリに餌をやる写真に私はくぎ付けになってしまった。今でこそクラシック音楽のコンサートですらカジュアルな服装で出かける時代になったが、かつてはどこかへ家族で「おでかけ」するときはみんなよそ行きのおしゃれをして出かけていた。すっかり忘れてしまっていたけれど、確かにそうだった。自分にも微かな記憶がある…。映し出される写真の時代からいまはもうすっかりライフスタイルや意識が変わってきたのだろう。果たしていまはいつおしゃれをしてでかけるのだろう。特に自分のような熟年以降のおとこたちは…。

 

レジャーが多様化し、「珍しい」とか「日本一の飼育日数、頭数」などでは人を呼べなくなった今日、これからの水族館はどんな水族館になっていくのか。どんな水族館を目指すべきなのか。

このことについておふたりは、生き物の生態を詳しく知ってもらうことにより、人とは違う生き物という視点を持ち、尊重しあうことができたら…。そんなことを展示としてはどう見せられるのか。いくら工夫しても見てくれる人に届かないと…。水族館をどういうふうに発信していくか考えていかなければならない。そんなことを話してくれた。それはミュージアムの世界で仕事をする人たちにとって永遠の命題といってもよいのかもしれない。とても共感できる話だった。

ちなみに、宮城にちなんだヨシキリザメ。この青くきれいで魅力的なサメに、うみの杜水族館の次の主役になってほしいのだが、まだ飼育事例はないのだとのこと。ヨシキリザメの姿が好きな私はその日がくるのを今から心待ちにしている。

 

せんだいメディアテーク副館長・遠藤俊行

*後編のコラム(ミュージアム界隈 第5回 「ミュージアムユニバース 〜すてき・ふしぎ・おもしろい〜」)はこちら

 

↓↓これまでに掲載したコラム「ミュージアム界隈」はこちら↓↓

ミュージアム界隈 第1回「それぞれの「交流」の物語」
ミュージアム界隈 第2回「日常の切れ間に・ブリューゲル展にて」
ミュージアム界隈 第3回「梁川にて」

LINEで送る
Pocket