SMMA参加館の学芸員をはじめ現場スタッフによるとっておきの情報や、地域のミュージアムならではの旬な情報をお伝えする情報誌「旬の見験楽学便」。
そのなかのSMMA参加館にゆかりのある人物にせまる特集「シリーズ人」から、第8回は、東北大学植物園より木村有香についてご紹介します。
木村有香(1990−1996)
▲明治33(1900)年石川県生まれ。ヤナギ科植物を専門とした植物分類学者。旧制高等学校在学中に原始的な形態で生きた化石といわれるクモ(のちに「キムラグモ」と命名された)を発見したことでも知られている。ヤナギは雑種が多く、分類がやっかいであることを知り、ヤナギ研究の先駆者として生涯、研究を続けた。東北大学植物園の初代園長。
大学時代から95歳までヤナギを研究し続けた生粋の研究者
ヤナギは春から夏にかけて葉の形や大きさも変わり、雄雌で異なる性質があり、雑種も多く、研究者の間でも「ヤナギというやつは実にイヤなものだ」と語られていました。それを聞いた木村有香は「よし、そんなに難しいものなら、やってやろう」と奮起し、九州から北海道まで全国のヤナギに番号をつけ、同じ個体から季節ごとに標本をつくり続けることで研究を 重ねました。木村の東北大学定年退官後の翌年1964年に、木村が蒐集したヤナギ科植物の標本や資料を収納する「ヤナギ館」が植物園内に建設され、その研究は、死去の前年まで続きました。
▲木村有香が採集した「センダイヤナギ」の標本
世界に類のないヤナギコレクション
ヤナギ園には、木村の蒐集した世界のヤナギ科植物の標本木の充実したコレクションが栽培されています。一本一本、丁寧に学名が付された木々の間を歩くと、まるで植物図鑑の中に迷い込んだかのようです。現在も国内外からの積極的な蒐集が続けられ、世界に類のないヤナギコレクションが日々、育まれています。
▲現在3350m²のヤナギ園に約600株、500m²の鉢場に約550鉢のヤナギが栽植されている
※このコラムは2019年8月30日発行の「旬の見験楽学便」に掲載されたものです。
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