学芸員が思いのままにつづる、ミュージアムのこと、日々の仕事のこと。展示に直接携わるミュージアムスタッフの言葉の中から、ミュージアムをもっと楽しむヒントを見つけてください。第9回は東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館 学芸員の奈良綾さんです。
多様な模様を創り、布や和紙に染め上げる型絵染の作家「芹沢銈介」。作品や人となりをより多くの人に知ってもらえるような企画を日々考えています。展示も仕事のひとつ。構想を練り、レイアウトを決め、作品位置を記した図を基に作業を開始。展示室では脚立を担ぎ、片手に巻尺を持って配置場所を確認します。次に続く作品を直接扱う作業は気が張るので、適度に休憩が必要です。上階のカップ式コーヒー自販機へ直行し、スタッフと交わす他愛のない(?)会話が、魅力ある展示空間を作るヒントになります。時に、思ってもいなかった問題点が生じて煮詰まったとき、不思議とアイディアが浮かぶことも。
展覧会が始まると、お客様からの言葉が励みになります。作品解説後に「分かり易い」「楽しかった」という感想をいただくと、新たなことをお伝えしたいと作品調査に奮起しますし、来館者アンケートの回答は、大切なご意見として毎日確認しています。東北福祉大学仙台駅東ロキャンパス内にある当館は、気軽に入れる場所です。お客様の声やスタッフのアイディアを受けて、「気になる」→「見たい・もっと知りたい」→「誰かに伝えたくなる」という素敵な連鎖が生まれる美術館を目指したいと思っています。
▲私の展示作業には欠かせません
※このコラムは2020年3月発行の「旬の見験楽学便」に掲載されたものです。
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