学芸員が思いのままにつづる、ミュージアムのこと、日々の仕事のこと。展示に直接携わるミュージアムスタッフの言葉の中から、ミュージアムをもっと楽しむヒントを見つけてください。第5回はせんだい3.11メモリアル交流館・交流係の田澤紘子さんです。
交流館が建つ仙台東部沿岸地域の良いところは、四季がはっきりと感じられるところです。事務室の窓から見える田んぼの風景も季節ごとにさまざまで、何やら面白いことをしている人を見かけると、思わず事務室を飛び出して話しかけてしまいます(笑)。春が近づくと、足元の雑草が色づきはじめます。じっくりと観察している方がいたので話しかけたところ、「足が悪くなった母の代わりに」と、草餅を作るためのヨモギを見極めながらあぜ道を散策していたのでした。
暖かくなってくると、田んぼの側を流れる堀は学校帰りの子どもたちの遊び場になり、ランドセルが道路に投げ出されている光景をよく見かけます。92歳のOさんは、自転車に乗って1時間かけてドジョウを取りにやってきます。「どうしてわざわざ?」と尋ねると、「戦地で食べたドジョウ汁が忘れられなくて」とのこと。「買うよりも、自分で捕まえたほうが楽しい」と、手作りの道具で奮闘していました。こうした、この地域の風土とともにある営みとの窓越しの出会いが、交流館に勤める私の楽しみです。
▲さまざまな動物も遊びに来ます!
▲大人にとっても遊び場です!
※このコラムは2018年7月発行の「旬の見験楽学便」に掲載されたものです。
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