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仙台市八木山動物公園の動物の愛称と由来を紹介しましょう

ほとんどの動物園が、動物とコミュニケーションをはかるためや動物に親しんでもらうなどの理由から、飼育員や公募によって愛称を付けています。今回はみなさんに八木山動物公園の動物の愛称とその由来をいくつか紹介しましょう。

遠足に来た子どもたちが、シロサイを見て、「サ~イ、サ~イ、こっち向いて。」と声をかけている光景をよく目にします。そんな時はいつも、「このサイは、『シンシア』という名前があるから、みんなで呼んでごらん。」と教えてあげます。そうすると、子どもたちが、「『シンシア』、『シンシア』、こっち向いて。」と呼びます。『シンシア』が呼びかけに応じて子どもたちの方を振り向いたりすると、みんな大喜びです。因みに、『シンシア』は、以前飼育されていた群馬サファリパークで付けられ、由来は、ギリシア神話に登場する月の女神アルテミスの別名キュンティアの英語読みです。

上野動物園からやって来た雌のスマトラトラは、上野にいた時の『リップ』を当園でも使っています。以前飼育されていたオランダの動物園で、『ティゲーチェ(Tygetje)』と呼ばれていましたが、上野のトラの飼育員が、『ティゲーチェ』だと舌をかみそうなので、オランダといえばチューリップが有名なので、チューリップと付けようと思ったのですが、それでも呼びづらいので、『リップ』としたのが由来です。因みに、『ティゲーチェ』の意味は、「くまのプーさん」に登場するトラの『ティガー』のことです。

キリンは、二頭の雌がいて、母親が『アミ』、娘が『アキコ』です。これらは、公募によりアミメキリンという種名から付けられました。

三頭いるアフリカゾウのうち、外の運動場において一頭だけでいるのが雌の『メアリー』、二頭一緒にいるうちの牙が折れているのが雄の『ベン』、牙のないのが雌の『リリー』です。『メアリー』は、以前飼育されていた宮崎県の動物園(現在閉園)で付けられ、『ベン』と『リリー』は、以前『メアリー』と一緒に飼育されていた雄の『ダン』(1989年死亡)と『メアリー』を参考にして、公募により付けられました。

インドゾウは、二頭の雌がいて、鼻面の白っぽいのが『トシコ』、一回り大きい方が『ヨシコ』です。『トシコ』は、1961年に閉園した大阪府堺市の大浜公園の水族館付属動物園から1963年に仙台市青葉区三居沢にあった市動物園(1957年から1965年まで開園)へ里子に出され、向こうでは『ハマ子』と呼ばれていましたが、仙台に来てから『トシコ』と付けられました。由来は、その当時の動物園関係者の奥さんの名前とか?『ヨシコ』は公募により付けられました。

ワタシの愛称は『ポーラ』です

【ワタシの愛称は『ポーラ』です】

ボクの愛称は『カイ』です 

【ボクの愛称は『カイ』です】

 猛獣舎にはホッキョクグマが三頭いて、大きな運動場に午前中出ているのが、雄の『カイ』。『カイ』は、公募によりアンデルセン童話の「雪の女王」に出てくる男の子の名前と海(かい)から付けられました。午後に『カイ』と交代で出てくるのが、雌の『ポーラ』。小さな運動場に一日中いるのが、『ナナ』です。『ポーラ』と『ナナ』も公募によりホッキョクグマの英名である「ポーラベアー」と北斗七星の「七」から付けられました。因みに、『ナナ』と一緒に飼育されていて、2004年に死亡した雄は、『ホクト』と呼ばれていました。

最も凝っている愛称は、上野動物園からやって来たオナガザル科アビシニアコロブスの雌の『アフロディテ』でしょう。上野で付けられた由来は、愛と美と性を司るギリシア神話の女神、最高の美神です。

新しく仲間入りした動物の愛称も紹介しましょう。黒毛が輝いている雄の対州馬(たいしゅうば)が『ヤマト』、活発に動き回る雄のクロサイが『アース』です。これらは、以前飼育されていた動物園などで付けられました。

他の動物の愛称は、八木山動物公園のホームページの「動物園ニュース 1066(トロロ)ポスト」の中の<2009年8月のお便りへ>をご覧下さい。

最後に、愛称を絡めた面白い話を一つ。ギリシア神話では、最高神『ゼウス』の娘として、『シンシア(キュンティア、アルテミス)』と『アフロディテ』が登場します。当園では、前述したように、その愛称がシロサイとアビシニアコロブスという種類が異なる動物に付いています。また、『アフロディテ』の父親は上野動物園にいて、ギリシア神話と同様に『ゼウス』という愛称が付いていますが、残念ながら『シンシア』は野生下で生まれたので、父親の名前は不明です。

仙台市八木山動物公園 学芸員 阿部敏計

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