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「こども文学館えほんのひろば」を開催しています

絵本の魅力
仙台文学館では、2000年の夏から、「こども文学館えほんのひろば」を開催しています。日頃、なかなか文学館にお出でいただけない、親子連れを対象にした企画で、絵本をとおし、お話の世界に親しんでもらえるきっかけを作りたいと始めました。

▲昨年のこども文学館の様子

 

 緑を望む、じゅうたん敷きの絵本の部屋や、絵本専門店や、県内で絵本の読み聞かせを行っている文庫の会の方々などによるお話し会、自分だけのしおりをつくるワークショップ、そして絵本の原画展を開催しています。夏休みのひとときは、ひときわ元気な声が館内にあふれます。11回目になる今年は、7月24日(土)から8月22日(日)まで、「佐藤さとる コロボックル物語展」を予定しています。

 第1回目の原画展でご協力いただいたのが、とよたかずひこさんです。とよたさんは、仙台市出身の絵本作家で、「うららちゃんののりものえほん」、「ももんちゃんあそぼう」シリーズなどで、多くのファンに親しまれています。とよたさんは、近所の子どもたちに、一緒に草野球をする「おっちゃん」と慕われ、また小学校では、自身の絵本を読み聞かせたりするなど、子どもたちとのやりとりを楽しんでいます。その肌感覚が、絵本から自然と感じられ、多くの読み手をひきつけています。

▲とよた かずひこ作「バルボンさんのおでかけ」 表紙(アリス館)

2000年の原画展当時、人気だったのが「ワニのバルボン」シリーズです。「バルボンさんのおでかけ」、「バルボンさんのおうち」、「バルボンさんのおしごと」、「バルボンさんとさくらさん」、「バルボンさんのおさんぽ」の5作品があります。1作目では、人(?)の良さそうな、ワニのバルボンさんが、バスで出かけます。居眠りをしてしまうバルボンさんを、お客さん(人間)が声をかけて起こしてあげます。実は、バルボンさんは動物園に勤めていて、みんなバルボンさんがそこに勤めているのを知っている・・・。このシリーズでは、バルボンさんの日常が次第にあきらかになってきます。動物園には、そこで働く動物の子どもたちのために保育園があり、優しいワニの「さくらせんせい」がいます。そのさくらせんせいとバルボンさんは、結婚し、そして「トマソン」くんと「もも」ちゃんという、家族が増えます。ワニや動物たちが人間と一緒に、同じように社会生活を送っているという絵本で、文字で説明すると「?」となりますが、絵本では、その非日常世界に、違和感なく、すんなりと入り込めるのです。何の構えもいらず、空想の世界を自由に楽しめる、それが絵本の魅力ではないでしょうか。

このシリーズでは、それと明らかにはされていませんが、実は、バルボンさんの勤務先は、あの「仙台市八木山動物公園」という設定です。もしかしたら、帰り支度をするバルボンさんの後姿を見かけるかもしれませんよ。

次回は、『動物』をテーマに、仙台市天文台の学芸員がレポートを行う予定です。どんなお話しが聞けるか楽しみにしてください。

仙台文学館 学芸員 渡部直子

※仙台市八木山動物公園では、現在爬虫類館でメガネカイマンというワニが飼育展示されています。以前は、シャムワニも飼育展示していました。

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