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コラム
「ミミ」の目に、映るものはなにか。

 そもそも物事は、妄想から始まるのかも知れません。

 1902年、映画史に残る名作「月世界旅行」が公開されました。元々マジシャンであったジョルジュ・メリエス監督によって描かれた妄想は、当時の技術を駆使することで見事なスペクタクルとなり、人々の目前に映し出されました。スクリーンに映る破天荒に動く世界を見て、当時の人々はさぞかし驚いたことでしょう。それから半世紀以上を経た1961年、人類は月の土に実際に足を下ろすこととなります。またその景色は、すでに大きく発展しつつあったTVネットワークを通じ、世界中に配信されることとなりました。それは日本のTVでも放映され、とても大きな話題を呼びました。

 遡ること、1895年12月28日。世界で初めての映画上映会が開催されました。その日を起点に映像は、時代のあらゆる状況や景色を飲み込むかのように拡大し、世界に大きな影響を与えていくこととなります。それはインターネットが各国に整備されつつある今も続き、きっと21世紀のわたしたちの生活にもさまざまな変化をもたらし続けることでしょう。

▲八木山動物公園のチンパンジー「ミミ」

 そして2010年の春、ふとした妄想が浮かびます。仙台市の中心街からほんの10分ほど車を走らせた山の頂上に、八木山動物公園はあります。そこでは多くの動物たちが、こどもや動物好きな人々を待ちかまえていて、口を開けて食事する姿や、ちょっとうとうとするような寝姿で、みんなを魅了します。そんな中に、「ミミ」というチンパンジーがいます。数人(霊長類であるチンパンジーを数えるとき、「何人」と数えることがあるそうですよ。)のチンパンジーがいるなかで、ひときわ穏やかでおとなしい、まだ若いメスのチンパンジーです。八木山動物公園を訪れた私に、そんな「ミミ」を紹介してもらうのには理由がありました。私には、「チンパンジーがビデオカメラを使うとしたら、そこにはいったいなにが映っているのだろうか。」という妄想があったのです。なぜなら成人のチンパンジーには、おおよそ人間の4~5歳児の能力があると言われています。だとすれば、幼児に映像のワークショップをおこなうように、チンパンジーにビデオカメラのごく基礎的な技術を受け渡すことが出来ないか。ひょっとすると、チンパンジーだって自分で何かを見つけ、ファインダーを覗き、レンズを対象に向け、録画ボタンを押すことができる…のかも知れない。そう考えただけで、なんだかわくわくしてしまいます。世界初の試みです。いや、世界初かどうかよりも、ひとりのチンパンジーである「ミミ」のなんらかの意識や意志や考えとでもいうようなものが、まさしく投影された「視線」が映像に定着されるということは、チンパンジーと映像を介したコミュニケーションがとれる、ということに通じるような気がするのです。そしてそれはまた、世界の豊かさを知ることのひとつでもあるような気がしたのです。

 と、ここまで妄想がはたらいた後、現実の壁にぶちあたります。それは「そんなことは可能だろうか?」という疑心暗鬼に始まり、「ミミ」に向けた学習プロセスを設計する上での課題や、日常的にあふれている仕事上の課題のすきまをぬって、取り組むことすらままならないかも知れない。などと夢見がちだった視線は、現実の課題の数々へと焦点を合わせていくこととなります。でも、このお話=妄想はまだ始まったばかりです。これからこつこつ機会と経験を重ね、誰かが月の土を踏んだように、いつか実現するのかも知れません。ここはやはり、物事は妄想から始まるのだ、ということを証明するためにも取り組んでいきたいと思います。もうこうしてここに書いてしまったのも、実現のエンジンをかけるためかもしれませんね。どうぞよろしく。

 次回は、宮城県美術館からの予定です。どんな動物に関するレポートかお楽しみに。

せんだいメディアテーク 企画・活動支援室長 甲斐賢治

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