見験楽学

もっと楽しくもっと学べるミュージアムを目指して。



見験楽学イベント

SMMAトピック

topic_001_catch

複数のミュージアムを集めて多面体ミュージアム・ワールドを構成する発想は、一世紀余りの歴史をもつ。コレクションや展覧会などを共同運営するフランス国立美術館連合、島全体が博物館群からなる世界文化遺産のベルリン「博物館島」、ワシントンD.C.の「ナショナル・モール」に軒を並べるスミソニアン博物館群などがその典型である。

21世紀のアラブ首長国連邦では新手のミュージアム開発計画が進められている。アブダビ沖合の「サディヤット島(幸福の島)」という小さな環礁に、日本円にして3兆円近い巨費を投じ、ルーブル美術館とグッゲンハイム美術館を誘致し、加えて大英博物館と提携する国立博物館、海洋博物館、展示ホールなどの施設群を集中的に建設しようというのだ。年間1500万人の観光客をあてこむ“ブランド・ミュージアムのテーマパーク”が数年後には出現することになりそうだ。

これら“世界都市”のメガ・ミュージアム群と「仙台・宮城ミュージアムアライアンス(SMMA)」とではスケールこそ違うが、集積効果でパワー・アップを図ろうという狙いにおいては共通する。SMMAには地域に顔を向けたミュージアム群ならではの強みもある。分野をまたぐ「クロストーク」のような共同企画は、学芸員仲間が地域固有のテーマに対する思いを共有しあう環境ならばこそ実現できたといえる。

写真
▲トラムで回るウィンターツアーの広大な庭園風景

写真
▲展示ギャラリー

写真
▲「時代の部屋」を思わせるミュージアム・ショップ

近隣ミュージアム間で広く連携の輪を拡げつつ、地方発の”グローカル”な交流にも挑戦してみてはどうだろう。手始めに、海外の姉妹都市や姉妹県州の魅力的なミュージアムをこのウエッブサイト<見験楽学>のメンバーとして加えていけば、仙台圏と世界をつなぐミュージアム多面体が見えてきて、人や展覧会の交流にもつながるだろう。

試みに、仮想パートナーをひとつだけ紹介してみたい。宮城県の姉妹州である米国デラウェア州に本拠を置く化学企業の創業一族デュポン家が創始したウィンターツアー・ミュージアム(Winterthur Museum)である。商都ウィルミントン郊外の広大な庭園内に建てられたデュポン家の屋敷が美術館になっている。

展示ギャラリーのほか、アメリカの歴史的な室内様式を再現する175室もの「時代の部屋」に8万点余りの家具、食器、織物などの所蔵品から逸品が並ぶ。所蔵品の複製アンティークで溢れるミュージアム・ショップは、「時代の部屋」と錯覚しそうな見事なディスプレイだ。美術館としてはユニークな室内装飾のコンサルティング事業も手がける。ガーデン・カフェのチキンサラダはとても美味かったから、別館のレストランにも期待がもてそうだ。

図書室には幕末明治の日本旅行記、陶器装飾の見本帳などのレアブックが飾られていた。オンライン・コレクションやiPodツアーは世界中からアクセスできる。子ども向けの遊んで学ぶ「タッチ・イット・ルーム」、「魔法の森」などの体験施設のほか、園芸学のインターンシップ、デラウェア大学と共同で開設するアメリカ文化と文化財学の修士課程、研究奨学制度やレジデンス施設などをもち、学術的水準も高い。

ウィンターツアーは全米のミュージアム、植物園の各200館園が参加する二つの相互利用ネットワークに加盟しているので、友の会員になると加盟館を無料で利用できる特典がつく。

見て楽しみ、学んで楽しみ、食べ、買って楽しむ――まさに「見験楽学」のツボを押さえたサービスといえよう。このような多様な利用者サービスが、組織の生き残りをかけたビジネスとして展開されているのがアメリカ型ミュージアムの特徴だが、日本のミュージアムにとっても学ぶべきヒントは多い。

ミュージアムが互いに刺激し合って「見験楽学」のレパートリーを増やしながら、ミュージアムと利用者の絆を強める多面的なミュージアム集合体としてSMMAが進化していけば、巨大なブランド・ミュージアムとは別の意味で、地域の貴重な財産となるに違いない。