見験楽学

もっと楽しくもっと学べるミュージアムを目指して。



見験楽学イベント

第1回アフリカゾウを見験楽学

第1回アフリカゾウを見験楽学

[テーマ]
アフリカゾウと人間は、似ている!?
[日時]
2009年10月12日(月)13:30~15:00
[会場]
八木山動物公園アフリカゾウ舎内

[出演]
八木山動物公園:阿部敏計主幹
仙台市科学館:斎藤弘明指導主事

アフリカゾウ メアリー:1966年生まれ。メス
(八木山動物公園)1983年、宮崎サファリパークより来園

骨格標本 ダン:生年月日不明。オス
(仙台市科学館)1969年八木山動物公園来園、1989年5月26日死亡
骨格標本 ミミ:生年月日不明。メス
(仙台市科学館)1969年八木山動物公園来園、1982年10月6日死亡

[参加者]
49名

クロストーク動画はこちら

RealPlayerのダウンロードはこちら
Windows版の方はこちら
Mac版の方はこちら

阿部
こんにちは。主幹の阿部敏計です。大学を卒業して、最初は保健所勤務をしていましたが、21年前にこちらの動物公園に来て飼育係になり、現在は全部の飼育管理をしています。
 今日は楽しんでいってください。
斎藤
こんにちは。仙台市科学館の指導主事、斎藤弘明と申します。私の本業は中学校教師です。4年前から科学館に勤めており、普段は地学領域の実験などを受け持っています。地学ということで古生物も担当しており、普段は化石になった生き物にばかり接しています。今日は元気なメアリーに会えるということで楽しみにしてきました。皆さんと一緒に、メアリーや、メアリーの先祖にもふれていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 みなさん、この場所はどうですか。私もここに入るのは2回目なんですが、前回の打ち合わせのときもハトが飛んでいました。天井の高さとか、すごいですね。普段、メアリーはここで夜を過ごしているということですが、どんな様子ですか。
阿部

ここの特徴は、天井が高くて、上から日が射すようになっており、今日は暖かいので切っていますが、床暖房や、壁からも温風暖房が入っているので居心地の良い環境になっています。それでも、冬になり寒くなってくると、ひび割れやあかぎれを起こすので、皆さんが手にクリームを塗るのと同じように、耳のひび割れなどを防ぐためにクリームを塗ってあげるんですよ。
 では、今日の主役、メアリーに登場してもらいましょう。
阿部
ゾウの飼育係の八巻さんです。よろしくお願いします。飼育係は、ゾウとコミュニケーションを図るために、毎日トレーニングをしています。
斎藤
ゾウの睫毛はとても長いんですよ。(また、ウワーの喊声)迫力あるでしょう。でもかわいいでしょう?今やっているのはリンゴですね。(かわいい、長―いの声)
阿部
メアリーのプロフィールを紹介しましょう。1966年生まれで、83年に宮崎にある動物園から八木山動物公園にやってきました。今年43歳になるんですよ。
 ゾウの寿命は60歳くらいといわれていますが、日本の動物園にいるアフリカゾウは短命といわれています。17歳とか20歳くらいで死んでしまうゾウが多いんです。だからメアリーは長生きなんですよ。
 エサは、ワラを100kg、そのほかにニンジンやリンゴなどを20kg、1日になんと120kgも食べるんですよ。こんなに食べるゾウの体重はどのくらいだと思いますか? なんと、4.4tもあるんですよ。
斎藤
4.4tと聞いて納得しました。この写真をご覧ください。私の横にあるのは、仙台市科学館にある、八木山動物公園で飼育されていたミミというメスのアフリカゾウの後ろ足の大腿骨です。私の手と比べてみると分かりますが、こんなに太いんですよ。
 メアリーに後ろを向いてもらいましょう。この骨はとても長くて、とても太いんです。4.4tという体重を支えているのですから、これだけ太いのは納得ですね。
 今回、ミミの骨を詳しく調べてみました。そうしたら、アフリカゾウという動物は、人間にとても似ているところがあるなって感じたんですよ。どこが似ていると思いますか? 顔と脚がすごくよく似ているんです。

鼻や牙を見る

阿部
皆さんの顔がゾウと似ているなんて、本当だと思いますか?
 ゾウの顔の中で特徴的なところはどこでしょうか? 大きな耳と、長い鼻ですね。ゾウは長い鼻をとても器用に使うことができるんですよ。今日は特別に、ゾウが鼻を器用に使う様子を実演して見せたいと思います。佐藤さん、お願いします。ここに、黒砂糖液が10リットルあります。
斎藤
一滴も残さず、一気飲みですね。
阿部
次は、小麦粉をいっぱいまぶした「うどん」です。
斎藤
流しそうめんもすくって食べるそうですね。小麦粉でも、むせないんですね。
阿部
とっても器用なんですよ。
 皆さん、自分の鼻を触ってみてください。人間の鼻には骨がありますね。では、こんなに器用なゾウの鼻には骨があるでしょうか?(ないと答えた人がほとんど。あると答えた人も数人)。では、斎藤さんに聞いてみましょう。
斎藤
(パネルが上から下りてきて)はい、これがミミの頭の骨の写真です。ミミの写真とメアリーを比較してみてください。ミミの頭のてっぺんが丸い形をしていて、そうするとこのあたりが鼻になるはずですが、ご覧のように骨がないんですね。
 じゃあ、ゾウの鼻って何なのでしょうか?実はですね、上唇が食べ物に届くようにどんどん進化して、その上の鼻と一体化し、現在のゾウの鼻の形になったんです。
 人間は、上唇と下唇をうまく使いながら物を食べたり、言葉をしゃべったりしていますよね。ゾウの鼻が上唇の一部分だと考えると、その器用さが納得できませんか?
阿部
そうは言っても、皆さん、メアリーを見てください。メアリーには大きな長い牙がありますね。皆さんには牙がありますか?
斎藤
ゾウの牙は、実は前歯の一部の犬歯が進化したものなんです。皆さんには牙そのものはありませんが、犬歯はありますね。これがゾウの牙と同じなんですよ。
 (メアリーの口を開けてもらって)次に他の歯も見てみましょう。(ゾウの臼歯の実物を示して)これが、ゾウの臼歯、奥歯です。(さらに写真と比較して)これはミミの歯を拡大したもので、上顎と下顎にそれぞれ臼歯が2本ずつ全部で4本見られます。数本の歯がくっついた形なんですね。
 (ナウマンゾウの写真を見せながら)ゾウの祖先のナウマンゾウの上顎の臼歯です。(センダイゾウの化石を見せながら)センダイゾウって聞いたことがありますか?500万年前に仙台に住んでいたことがあって、そのセンダイゾウの歯の化石です。ご先祖さまと比較してみてもおわかりいただけるのではないでしょうか。
 

頭を見る

阿部
皆さんはどうやってご飯を食べますか?座って食べますね。では、ゾウのように草を食べる動物はどうでしょうか?座って食べずに、立って食べますね。草食動物にはほかにどんな動物がいますか?例えば、シマウマはどうでしょう。
 私のほうも動物の骨を持ってきてみました。シマウマの骨です。ゾウと同じようにすりつぶして食べるんですが、前歯が出っ張っているんです。
斎藤
シマウマはどうやって草を食べるのでしょうか?シマウマは、頭を地面に下ろして、門歯で地面に生えている草を千切りながら食べます。なぜそういう食べ方ができるかというと、シマウマはある程度首が長いからなんです。首が長いから、足を伸ばして立ったままでも首を下ろせば地面に届くんです。キリンもそうですね。足はもっと長いですが、その分、首が長いので、地面の草を食べることができるんです。
 野生動物がどうして座って食べないのかというと、座ってしまうと、肉食動物がきたときにすぐに逃げられなくて、襲われてしまうからです。だから、立ったまま水を飲んだり、草を食べたりするんです。
 では、ゾウはどうでしょうか。首は短くて、頭は非常に大きいですね。この体型で、頭を地面に下ろしても地面に届かないし、よろけてしまいますね。だからといって、膝を折って、座って水を飲んだり草を食べたりすると襲われてしまう。そこで、長い鼻で千切って食べたりするようになったんです。さっき、ブドウを鼻でつかんで口に運んで食べましたね。ゾウの鼻は、私たち人間の手と同じ働きをするんです。人間は手で食物をつかんで口に持っていくことができます。だから、顔や首が長い必要はないんですね。
 もう一度、写真に注目してください。これは頭を横から見た写真ですが、シマウマと違うところはどこでしょうか?シマウマよりも顔が長くないですね。では、人間の頭はどうでしょう。これは縄文人の写真ですが、どうですか、似ていると思いませんか?
 ゾウも人間も、口を地面に近づけて水を飲んだりする必要がないから、ゾウの頭の骨を横から見ると、人間の頭の骨に非常によく似た形をしているんです。まぁ、縄文人ですから、現代の私たちとはまたちょっと違いますけど。どうですか、ゾウって私たち人間に非常に近いじゃないですか。

足と脚を見る

阿部
なるほど。でも、足はどうでしょうか?
斎藤
それじゃ、ゾウの足と飼育員の足比べをしてみてください。
阿部
飼育員の杉山さんお願いします。今日は特別に杉山さんには長靴を脱いでもらって、メアリーの足の裏と、杉山さんの足の裏を比べてみましょう。
斎藤
それで同じだったらすごいですよね。
阿部
杉山さんの足は、五本指で、かかとがあり、土踏まずがアーチ状になっています。ゾウと似ていませんよね。
斎藤
外見だけで判断してはダメですよね。写真を見てください。
 これはミミの前足の骨です。指の骨は何本ありますか?皮膚で隠れていますが、ほら、ちゃんと指が5本ありますね。それに、足を裏側から見てみると、指と指の間には空洞がありますね。指はこういう形になっているんです。もしベタッとなっていると、足の裏に振動を受けたときに衝撃が肩や背骨、頭にまでぬけちゃいます。この空洞は、振動を受け止めるクッションのような働きをしているんです。
 そして、これはミミの後ろ足の骨です。足の前に指があって、後ろにかかとがあります。ゾウの太い足の皮と肉の内側には、こんな骨が隠されているんです。人間と似ていますね。
 それに、写真は持ってこれなかったんですが、動物の脚は、腰から膝までの大腿骨の長さと、膝から足までの長さでは、膝から下の方が長いんですね。ところがゾウは、大腿骨の方が長いんですよ。これも人間に似ていますし、ゾウはシマウマなどと違って後ろ足の膝関節の向きがヒトと同じなので、ゾウは膝カックンができるんです。
 ここまで、ゾウの頭と脚が人間とよく似ているという話しをしましたが、ところで、八木山動物公園にはメアリーのほかにもゾウがいましたね。

ゾウの進化を考える

阿部
はい、アフリカゾウのメアリーのほかに、インドゾウが2頭います。名前はトシコとヨシコの親子で、トシコは開園以来、今年で45周年になりますが、ずっとここにいて、推定56歳になります。非常に長生きなゾウです。
斎藤
インドゾウはアジアゾウの一種と考えていいですか?
阿部
そうですね。ゾウには2種類あって、ひとつはアフリカゾウ、そしてもうひとつはアジアゾウです。アジアゾウにはさらにいくつかの亜種があります。亜種とは、生物の分類区分のことで、地域に離れていることにより出現する種類のことです。その亜種の中に、インドゾウ、セイロンゾウ、スマトラゾウなどがいます。一方、アフリカゾウには、一般的にアフリカゾウと呼ばれているサバンナゾウと、小型のマルミミゾウがいます。
 当動物公園には、アフリカゾウのメアリーのほかに、リリィというゾウがいます。メアリーに比べると体が小さいので、マルミミゾウではないかと思ったのですが、DNA鑑定の結果、マルミミゾウではないということがわかりました。
斎藤
仙台市科学館では、今まで紹介したミミのほかに、同じアフリカゾウでオスのダンや、アジアゾウの小象の骨格標本を展示しています。そのほかに、ゾウの先祖も展示しています。これは塩釜-魚市場で有名ですよね-で発掘された骨を元に復元したものなので、シオガマゾウと呼ばれているゾウです。体はメアリーよりも大きいのですが、耳が小さくて、鼻が短いですね。牙も短くて、下を向いています。そして下唇を見てください。白い出っ張りが見えますよね。前歯なんです。
 この時代のシオガマゾウは、どうやってエサを食べていたと思いますか?これは想像なんですが、この時代のゾウは、下顎の歯をちりとりのように使って、鼻で食べ物をかき集めていたんじゃないかといわれています。
この写真はセンダイゾウを復元したものですが、牙が長いですね。科学館では、こういったものも展示しています。
 ゾウは今まで進化と衰退を続けてきました。この「長鼻目の系統樹」というパネルは、現在のような鼻の長いゾウがどのように進化してきたかを示した図です。一番上にアフリカゾウとアジアゾウ、中段くらいにセンダイゾウ、下のほうにシオガマゾウが位置します。ゾウには、アフリカゾウ、アジアゾウのほかにこんなに多くの種類がいたんですが、今ではこの2種類のほかは絶滅してしまったんですね。
阿部
実は、今日、皆さんが座っているところはメアリーがオシッコやウンチをする場所なんですね。向こうではやらないで、ここでするようにしています。人間は昔からこのような場所を利用してきました。訓練によってゾウもこのような場所でできるようになったのです。そんなところも人間に似ているかもしれませんね。
 ところで、アフリカゾウとアジアゾウの現状ですが、まず生息地が減少しています。そして、象牙を目的とした密猟も絶えないので、生息数も非常に減ってきています。昔から人間は陸上最大の動物であるゾウを利用してきました。ここでも飼育員がゾウをトレーニングしていますが、ゾウの脳の働きは非常に発達していて、訓練によって人間に非常に役に立ってくれるんです。そんな貴重な動物を人間は、象牙という欲のためだけに狩ってきました。ぜひこの機会に、ゾウの将来について考えてほしいと思います。
斎藤
そうですね。こうやって一生懸命に私たちと一緒に生きているゾウがずっと繁栄するように、私たちができること、やらなければいけないことを考えていかなければならないと思います。もし人間が昔からこういう考えを持っていたら、絶滅しないで今も見ることができたゾウもいたんじゃないかな、と思います。
 今日は、メアリーを主役に、アフリカゾウの生態と骨格、そして進化について勉強してきました。これで今日のプログラムを終了します。

参加者の感想

体重計に集ってゾウの体重と比較する参加者

(1年生の女の子とお母さんにインタビュー)

・骨がちょっと怖かったけど、楽しかった。ゾウがかわいかった。
・近くで見る機会があまりない動物を、詳しい解説付きで見られて良かったし、分かりやすかった。ゾウの鼻には骨がないとか、足の形とか、初めて知ったことがいろいろあって、興味深く聞くことができました。見てまわるだけでも動物園は楽しいですが、こういう機会があるとより詳しく動物のことが分かって、子どもたちも興味を持つんじゃないかなと思います。